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遠回りの恋路〜初恋〜
【初恋 恋愛小説】

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遠回りの恋路〜初恋〜-2

終業式。
廊下を友人に囲まれて帰っていくあなたの背中をずっと見ていた。

『大好きでした
 さようなら…』

と、呟きながら。
届かないとわかっていても、声には出せなくても。
ひたすら、心の中でただ、呟いていた。
彼の背中が見えなくなるまで…。


あの頃は、世界の中心に自分がいると思っていた。
何でも自分の望む通りになると思っていた。

でも、手に入れたいものが出来た途端。
それは違うと気付くのだ。


高校生2年の頃、自分も転校することになった。
新しい土地で、新しい自分に生まれ変わって、新しい恋をしようと思えば思うほど。

もう会うことはないであろうあの人が、心の片隅にいることに気付く。

初恋とは、とっても厄介なものなのだ。いつまで経っても色褪せやしない。
違う誰かと恋を重ねても、いつも心の中には彼がいた。
それから数年。
初恋の人を忘れられずにいるのを未練がましい、女々しいと嫌気がさすこともあったけど。
一生に一度の初恋なのだから、大事にしようと思う様になった。

もう一度、彼と出会った場所に行こう。そして、本当の過去にして来ようと…。

彼がその場所にいない事なんてわかってる。その場所に行ったからってふっきれる確証なんてどこにもない。
でも、じっとしているのも嫌だった。
何かを動かしたかった。

新幹線に乗り、地下鉄に乗り換えて、中学校へ続く坂道を登る。
何年振りなんだろう、中学校なんて。10年という年月を経た中学校は少し様変わりしていた。

校庭の端の水飲み場に佇む。
10年の時を経てもそこは変わっていなかった。
心のどこかがキュッと苦しくなる。

もう大丈夫。
ここに来れただけで…。
無理に忘れる必要はない。
ゆっくりと、
思い出にしていこう。


そのまま、友人との待ち合わせ場所に向かう。
友人が声をかけて、懐かしい仲間を集めてくれたらしい。
皆で飲もうという話になった。

指定されたお店の前には人だかり。皆がわいわい騒ぎながら迎え入れてくれた。
そしてその中に、少し大人びた彼の姿を見つけた。
「あ、れ…?」
見間違い…?
それとも誰かと間違えてる?
でも思い出の中の彼と輪郭が重なる。
まさか…。
「じゃーん!ビックリした?」
はしゃぐ友人の隣で、まだ自分の目を疑っていた。
「久しぶり…ていうか、覚えてくれてる…?」
遠慮がちな彼の言葉に、
「うん…、久しぶり。またこっちに戻って来てたの?」
絞り出すように声を出す。震えそうな喉を押さえながら。
「大学の時にね。でも転校したって聞いてビックリした」
中学の時に比べ背も高くなった彼がフッと笑う。
思い出の中の彼が鮮やかに蘇る。


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