投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

遠回りの恋路〜初恋〜
【初恋 恋愛小説】

遠回りの恋路〜初恋〜の最初へ 遠回りの恋路〜初恋〜 0 遠回りの恋路〜初恋〜 2 遠回りの恋路〜初恋〜の最後へ

遠回りの恋路〜初恋〜-1

あれは、幼い幼い初恋。
瞳を閉じればあなたの笑顔。
でもその笑顔も霞がかかっているようにハッキリ思い出せなくて。
ただ、心が締め付けられて苦しくなる―――。


私の初恋は平均より遅かった様で、始まりは中学1年生の初夏だった。
確かあれは部活の休憩中。
校庭にある水飲み場で、水を飲み終えて顔をあげると、向かいで同じ様に顔をあげたその人と目が合った。

その瞬間。
息が苦しくなった。
胸が急に締め付けられて…。
サラサラの黒髪と涼やかな目元、何よりもその人が纏う爽やかな雰囲気に釘付けになった。
一目惚れって、こういう事を言うんだろう。

それからは、四六時中その人の事ばかり。
休み時間が来ればソワソワしてる自分。
下校時には姿を探してキョロキョロする自分。
冬服から夏服に変わっただけでも胸がキュンとする。
クラスが違う彼の顔が見れた日は一日中幸せで、見れなかった日は一日中暗かった。

些細なことでも喜べた。
目が合ったとか、腕がかすった…とか。
考えてみれば、会話だって友人を挟んでのもので、数は両手で足りる位だったように思う。
会話出来た時は嬉しくて、天にも昇る気持ちだったけど、想いが漏れてしまわないように必死だったからあまり記憶がない。

あの頃は『片想い』を満喫していたのかもしれない。
『付き合う』という行為自体、いまいちピンと来ていなかったあの頃…。
まるで恋に恋している様な。

しかし、見ているだけの恋は突然終りを告げる。

彼の友人から、中2の終りに引っ越すらしいと話を聞いた。

自分の見ている世界が真っ暗になったような気がした。
今まで見ているだけで満足していたのに、それだけじゃ足りなくなった。
なんとか、自分の想いを伝えたい…。伝えずに後悔するより、伝えて後悔した方が良い。

バレンタインデー当日、放課後まで悩んで、彼の家まで自転車を走らせた。
もう、これを逃したらチャンスはない。そう自分を奮いたたせて…。
たまたま帰宅途中だった彼を、運良くつかまえることが出来た。
こちらを向く彼の顔を見上げることが出来なくて、下を向いたままチョコを差し出した。

「受け取って下さい…」

そう言うだけで精一杯で。
返事までがとても長くて。
息が詰まりそうだった。

「引っ越すから…ちょっと…」
とだけ言う彼に、私はチョコを背中に隠して。
「ありがとう」とだけ言って逃げるように帰った。
もうそれだけで十分。
私の見てるだけの初恋はあっけなく散った。

一晩中泣いて泣いて。
目も腫れて、喉もカラカラになって。
漸く落ち着いて来た頃。
六個入りのチョコを一つずつつまみ始めた。
涙やら鼻水やらが混じったチョコの味。
私はチョコは元々好きではなかった。でもあれからはもっと好きになれなくなった。
喉がザラザラする感じと、あまったるさと、苦い初恋を思い出すのが…なんか嫌だった。


遠回りの恋路〜初恋〜の最初へ 遠回りの恋路〜初恋〜 0 遠回りの恋路〜初恋〜 2 遠回りの恋路〜初恋〜の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前