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秘密
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秘密〜和馬の祈り〜-6

6 秘密
〜和馬の祈り〜
皐の容態が急変したのは、一週間後だった。


トゥルルルッ

電話の音で目が覚めた。


「皐っ!!!」

病室が騒がしい。


『君っ、離れて!!』

何が起きているのか、分からなかった。


「和馬っ!!」

翔が駆けてくる。

ーショウ。

「大丈夫か!?」

体を揺さぶられた。

「!!和馬っ、おい!!!」

ぱしっ

 頬が熱くなった。

「・・・っ」
熱さに頭がハッキリする。
「しょ、う」
「よし、」
は、と安堵したように俺を見た。
「しっかりしろ。苦しいのはお前じゃない。皐だ」
「ー・・・・ああ」

ふう、と息を吐く。少し楽になった。

「病室は?」
「入れない」
「そうか・・・」
椅子に座る。


 ー分かっていた。いつかはこんな日が来ること。

「情けねぇ」

己に叱咤する。

ぽんぽんと背中を叩かれた。

「翔、」
「ん?」
「ありがと、な」
「早ぇよ」
ははっと笑う。

ーありがとう・・・。


「山城さんの御家族様ですか?」
不意に看護婦が聞いてきた。

どくっ

 心臓が高鳴る。

「いえ、山城さんには家族が居ないので、俺達が」
翔が答えた。
「御親戚か何かですか?」
「・・幼馴染み、と恋人です」


『最後に、何か話してあげなさい』

医者に言われ、病室に入る。

「皐っ」

「ー・・・・・・かず、と、しょぉちゃん?」

ぴっぴっぴっ・・・

心拍音が響く。


「さつきっ!!」
急いで近付く。

「和馬ぁ、側に、居てくれる、の?」
絶え絶えに喋る。
「ああっ!!ずっと側にいる!」
 ぎゅっと皐の手を握り締める。

「うれし・・・」

皐が微笑んだ。つーと涙がしたたり落ちる。


「かず、お願い、があるの・・・。きいて?」
「ああ」
ふっ、といつもの笑顔で皐が話した。
「生きて。死んでは、ダメ。・・・かずが来ても、私が通さないんだから」
「さつ・・・」

ぽたっ

涙が落ちる。
ー皐のじゃない、・・・俺のだ。

「生きて。ー・・・・お願い。『未来』を、歩いて・・・・・」
それと、と俺の後ろを見る。
「しょぉちゃん、大学合格、おめでとぉ」
にっこりと微笑む。
「皐っ」
翔の顔が歪んだ。
「遅くなって、ごめっ」
ごほごほと咳き込む。
「皐、もういい。それ以上喋るなっ」
手の力を強くする。が、皐は首を振って話を続けた。
「和馬を、よろしくね。・・・・これから、支えてあげて」
「ー・・っああ」
分かった、と翔がうなずく。

「よかった・・・」
つーと、一筋涙が落ちる。

「ー・・っ」
不意に手の力がなくなった。


「・・っ!!皐っっ!!!」


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