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ずっと、好きだった
【片思い 恋愛小説】

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ずっと、好きだった(2)-4

もう、今日は眠るのを諦めよう。
カーテンが朝日で透き通ってゆくのを眺め、私は息をついた。
彼からの置き忘れていた告白を聞いた後、私たちはしばらく無言のままで過ごし、互いの電話番号が変わっていないことだけを確かめて別れた。
『ずっと、好きだった』
彼の告白を思い出す度に、涙の気配で目頭が痛くなる。
私は、きっと気付いていたのだ。
心より先に、体で。
心では、高校の時から慕ってきた兄のような彼を求めながら、体では彼からの男としての愛情をちゃんと受け入れていた。
乱暴な抱き方をされながら、その指や声、私を包む腕に優しさを感じていたのは、彼の存在に救われていたのは、その愛情に癒されていたからだったのだろう。
けれど、そうならば余計に私の犯した罪は重い。
本気で私を愛してくれていた人に、なんて残酷なことをさせてしまったのか。
彼は、どんなに辛い想いをしていたのか。
そんなことも知らず、私は彼を恨もうと努力しながら過ごしてきた。
「悠紀…」
携帯電話のアドレス帳を開き、彼の番号を指でなぞる。
その時、着信音が鳴りだした。
あまりのタイミングの良さと、こんな時間にかけてくるはずはないという考えが、ボタンを押し間違えてしまったのかもしれないと思わせたが、表示されているのは確かに悠紀からの着信だった。
「…もしもし」
『ごめん、寝てた?』
「ううん…起きてた」
『そう。なら、よかった』
「どうしたの?」
『別に…用事はないんだけど』
受話器越しの彼の声は、いつもより少し低く聞こえた。
鼓動が段々と加速し、耳が熱くなる。
『ごめん、こんな時間に。切るわ』
「あ…」
もう少しだけ、と言いかけて思い止まった。
秀司の困った笑顔が頭をよぎった。
『何?』
「なんでもない。おやすみ」
『おやすみ』
携帯電話を離し、布団の中に潜り込む。
まだ熱のひかない体が、もう悠紀と関わってはいけないと教えていた。


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