ずっと、好きだった(2)-3
彼の笑顔を見てから、多少の緊張は緩み、喫茶店に腰を落ち着かせてからも、話は尽きなかった。
あれは幻だったのではないかと、都合のいい考えが浮かぶほど楽しい時を過ごした。
けれど、やはりあの疑問は付き纏う。
なぜ、救われていたのか。
彼は私にとって、どんな存在だったのか。
「もう、時効だよね」
会話が途切れたとき、私は慎重に切り出した。
当然、何のことを言っているのか尋ねられると予想していたが、彼はすべてを理解しているように目を細めた。
「そんなの、ないだろ」
「…あるよ」
「ないって。何回謝っても、いくら時間が経っても」
「でも、あれは私だって…」
冷たく重たくなってしまった空気に、あの時のことを口にしてしまったのを後悔する。
けれど、知りたかった。
ずっと胸にあった疑問の答えを。
「ノリは悪くない」
彼が手にしていたコーヒーカップを皿に戻した。
「俺は、ずっとしたかったから」
何を、なんて、鈍感な私でもさすがにそこまで野暮な質問はできない。
「…いつから?」
「最初から」
「最初って…」
「高校の時から」
彼は当たり前のように、けれど決して投げやりではない響きで答えた。
「好きだったんだ」
ああ、やっとわかった。
「ずっと、好きだった」
彼の愛情に、私は救われていたのだ。