きらいなところ-1
寂しいなんて誰かに言ったら負け。
涙なんて人には見せれない。
いつも無理してでも笑わなきゃ……。
私は笑ってなきゃ価値がない、存在していないのと同じ。
足が痛くても立ち上がらなきゃ。
本当に痛いのはそこじゃないから。
………心が痛い。
「無理に笑うなよ」
「……へっ?」
突然言われた言葉、思わず聞き返してしまった。
彼はため息をつくともう一回、私の目を見て言った。
「だから、そんな無理に笑わなくていい」
「………………」
彼はズズッと優雅に紅茶を飲んでいる。
十歳は年上の彼。そんな姿には大人の色気を感じるとかそういうことはまったくなく、彼の言葉に私の胸の奥はチクリと痛んだ。
………何でわかったんだろう。
彼と会って、こう話をするのはもう数え切れないけど、そんなこと言われたの初めてだった。
ちょっとだけ本当の自分を知っていてくれたという嬉しい反面、そんな弱い、本当の私のすべてを見せたくないっていう思いが強かった。
「……べ、別に無理して笑ってないよ。もともと、こーゆ笑い方なだけ!」
って、言い訳バレバレかな。
彼の顔見れないよ。
何か顔が熱いし。
あぁ、落ち着け、落ち着け。
あ、紅茶飲もう……。
って、熱っ!!
彼はそんな動揺している私を見てこらえきれないとばかりにククッと笑った。
私はそんな彼を睨む。
「何?」
「いや、別に?」
表情をすぐに無表情に変える。
大人の余裕っていうんだよね。こういうの。
……何か悔しい。
紅茶を一口、二口すすいだ。
「……ん、紅茶美味しいねっ」
話をそらす。
不自然にならないよう、そっと。
「そりゃあ、お前が来るから特別に入れたから当然」
また心のこもってないキザなことを言う。
でも、本当に彼がいれたコーヒーだのお茶だの、とくに紅茶は絶品。
……いつかテクを絶対盗んでやるんだから。
カップをテーブルに戻すと、彼がジッと私の顔を見透かすように見ていた。
ドキッと不覚にも一瞬だけ胸が高鳴った。
彼はそんな私に気づいたらしく、フッと視線を戻した。
「で、彼とはあれからどうなった?………その話をしにきたんだろ?」
「別にそういうわけじゃないけど………」
胸が痛い。
「か……帰ってこないよ。最近はとくに」
そっかと彼は心地よく呟く、その声や表情は本気に私のこと心配してくれてるのかな?
………て、まさかね。