『ご主人様の気持ち』〜最終話〜-1
夕暮れ時。
クランクした校舎裏の片隅。
足元には雑草。すぐ横には金網。
誰も知らない、誰も入らない空間。
その狭い隠れ家的場所で、私は怯えていました。
どうして?
何故ですか?
頭の中で何度も何度も繰り返しながら、私はただ、震えていたのです。
『ご主人様』である聡志様と『メイド』である私の主従関係。
いつも命令をされてきましたが、嫌だと思ったことはありません。
むしろ嬉しかったのです。
毎晩肌を合わせ幸せでした。
願いが通じたことに、感謝していました。
その一方で、私は悩んでいました。
いつ聡志様の傷が完治するのか。
いつこの関係に終止符が打たれるのか。
不安でたまらなかったのです。
あれから二週間。
そう考えてもおかしくない時期でした。
命令しながらも優しい聡志様。
この関係を、この瞬間を、手放したくない。
心からそう思っていたのですが・・・・。
「何をしていたっ」
ガシャーンッ!
金網に押し付けた今の聡志様は、私の知っている聡志様ではなかったのです。
詰寄るその顔は怒りと苛立ちが溢れ、肩に食い込む指の力に、恐怖を感じるほどでした。
私は大好きな聡志様のあまりの豹変振りに、身体を震わせていました。
どうしてですか?
何故なんです?
瞬きを忘れた瞳に涙をにじませ、何度も繰り返していたのです。
聡志様は怒りを抑えているようでしたが、
「あの男は誰だ」
言い放つ声は低く、刺々しいものでした。
私は蛇ににらまれた蛙のように動けない状態のまま、小さく呟いたのです。
「ぉ、小田君と・・・・話を・・・」
やっとの思いで震える声を吐き出した途端、聡志様の目は一層苛立ちの色を濃くしたのです。
そして何か言いたげな口元が苦々しく歪むと、
「ゃぁっ!」
突然、私を押し倒したのです。
「ぃやっ!」
力ずくで押さえつけたのです。
「やめて下さい!」
ボタンを飛ばし、ブラウスを引き裂いたのです。
どうしてこんなことになってしまったのでしょうか。
私は話をしていた。
最近、会話を交わすようになった小田君と、いつものように今日の講義について意見を交わしていた。
ただそれだけだったのですが、突然割り込んできた聡志様は怒りを露にし、誰も訪れないこの場所に連れて来たのです。
「ぃや、やめてっ」
私は抵抗を示しました。
胸の前で固定された手首を何とか外そうと暴れてはみたものの、力の差は歴然。
何の効力もありません。
聡志様は力を緩めず、片手で私の手首を押さえました。
スカートの中に手を入れ、下着を剥ぎ取りました。