携帯電話-1
彼女を送った後、家まで一人で歩く帰り道。
はぁ‥‥
もう何度目のため息だろう。
なぜ彼女にあんな質問をしてしまったんだろう。
今日の夕飯なんだろう。
いやいや、最後のはどうでもいい。
本当に何であんなこと聞いたんだろう‥‥。
きっと切羽詰まってたんだろうな。
うん、そうだよ。あの時一緒だったのが知らないオッサンだろうと迷子の猫だろうと俺は同じことを聞いたんだよ。
そうそう。
そうか‥‥?
ちょっと無理があるかな‥
ここはあんまり深く掘り下げないでおこう。
うん、それがいい。
そうこうしてるうちに自宅の前。
さぁ、どうする奏人。このまま帰宅するのか?
考えられる手段は3つ。
A:腫れた目を隠して部屋へ直行。
B:腫れが引くまでこのままプラプラする。
C:敢えて自らケンカしてきたんだぜ☆的な発言をして、誤魔化す。
まずCは使い物にならないな。選択肢に入れた時点で阿呆全開だ。
残るはAかB。とは言え、俺の満腹中枢が空腹を知らせる信号を周りに人がいないことを確認して安堵するほどの大きな爆音と共に発信する。
作戦Aで‥‥。
ただ帰るだけなんだけど。
玄関に入ると美味しそうな香ばしい匂いが‥‥。
くそっ‥
人間の反射に忠実に反応する俺の神経は危うくこぼれそうになるほどのよだれを分泌する。
「おかえり、もうすぐできるわよ。早く着替え‥‥」
ナイスリアクションッ!!グッジョブ☆マイマザー♪
これで俺の英語の偏差値はどのくらいのものかお分かりになったでしょうね。
思ったけど、いつも俺だけコメディータッチな気がするのは気のせいか!?
「どうしたの、その顔!?それじゃ尚更‥‥野良犬とケンカでもしたの!?」
その3行の台詞にツッコミどころ満載だよ‥。
だいだい尚更って‥
もとがよくないのくらい知ってるけどさぁ‥親が普通言うか?仮にも自分の遺伝子が組み込まれていると言うのに。
それとこの現代で野良犬とケンカなんざしてくるヤツがいるかよ‥‥。
俺は昭和の子供かっ!?
時代錯誤かっ!?
一通り心の中でつっこんだ後、何も言わず自室へ向かった。