針のない時計-10
カラカラ…
二本目に火を付けたとき…
「ハル…」
ハルがゆっくり私の隣に腰を下ろした。
「振られちゃった…」
「…そっか…」
「何だよ…聞いてたくせに…」
「ん…」
悲しそうに笑うハル、消えてしまうんじゃないかと思ってしまった…
「咲…」
そんなハルを私は抱きしめていた…
暖かいハルの体温が伝わってきて、ハルは小さく震えるように泣き出した…
「頑張ったね…ハル…」
どの位経ったのか…ハルの体が私から離れていく…
アルコールが残っていたからか…眠たさからか…暗闇のせいか…それは自然だった。私達は何度も、何度も…キスをした…
あの日から…ハルは私の家へ帰って来ることはなかった…
ハルがいなくなって1ヶ月…
計画的犯行だと気付いたのはハルが帰ってこなくなって一週間が過ぎた頃だった。ハルの荷物がきれいになくなっていたのだ。
バンっー…
激しく開いた玄関の戸の音で目が覚めた。
ー…3時…
ドンっ、バンっ、ガシャン…
いろんな音がしたかと思うと、酒臭さと共に瓜生が私のベッドに倒れ込んできた。
「おい…」
瓜生、無言で私にキスをした…
やっぱり瓜生のキスは、暖かく、優しい…
一度離れた唇が再び口に触れると同時に私の上着の中に瓜生の手が入ってきた。
「ちょっ…瓜生っ…なにすんの?!」
「何…って…この状況で…分かるだろ」
そう言った瓜生、ブラのホックをすんなり外す。
「やめてよ瓜生…何…酔ってんでしょ!!」
「ああ、酔ってる…酔わなきゃ好きな女に手もだせない情けない男だからな」
何だかいつもと違う…
「瓜生?なんか変…」
「変…だぁ〜?…俺は拒否してハルは受け入れるのか…ハルに惚れてんのか…」
ー瓜生?…
「…見てた…の?…」
「咲…好きだ…」
ドクン…ドクン…
体が熱くなる…
「…咲…好きだ…」
「んっー…」
ー瓜生…
「…好きだ…」
繰り返される瓜生の言葉…
私は聞かないふりをして瓜生の耳元で、どうにか、ようやく言葉をはいた。
「…していい…でも…でも…瓜生の気持ちは…気持ちは受け入れられない…」
「…ああ…」
ー……
「…好きだよ…咲…」
それでもなお繰り返される瓜生の言葉…