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針のない時計
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針のない時計-11

そして…

瓜生もいなくなった…
私は一人になり、タバコの本数を増やした。
これでいい…私は一人で生きていかなくてはならないから。
恋愛なんて、感情なんて必要ない。
幸せなんて、…必要ない…
そうだ、これでいい…

瓜生がいなくなって半年後、隣の蝶子さんは東京へと旅立って行った。

あれから、2人からの連絡もなく、4度目の冬が来た…
今日は私の27回目の誕生日、誕生日には毎年ここへくる。
ここは高台にある霊園…
今年は暖冬で暖かく、今日も日差しが強い。
「龍(たつ)…」
私、墓石に向かい手を合わせる。
「咲…」
!!っ
ーえ…
驚いて振り向いた。
「…瓜生…?」
そこに立っていたのは、瓜生だった。
「な…何で?え…?何?何でここにいるの?は?…」
私の頭は混乱する。
「前に咲の友達がrococo来たときに聞いたんだ…高校のときに彼氏が死んだことも、そいつがハルに似てることも、死んだことを自分のせいだと思ってることも…」

『思ってる』…違う…事実だ…

高2の冬ー
1つ上の彼氏がいた…
「咲、おめでとう…あ…」
「?…何?」
「プレゼント忘れた…」
「はぁ?!何それー」
「明日じゃ…」
「だめっ、意味ないじゃん」
上目づかいの龍にプレゼントを取りに帰るよう言い、私はファーストフード店で待つことにした。
この日は本当に寒くて、雪がちらついていた。
バイクで戻った龍、私は何時間も待つことになる…

病院のベッドの上にいた龍、血の臭いとゴムの焼けたような、皮膚が焼けたような悪臭が鼻を突き、私はただ立ち尽くすのみだった。
「あんたが殺したのよ!!うちの息子返してーーー…」
耳を切り裂くようなおばさんの声が私の時間をピタリと止めた…

「帰って、龍を殺しておいてよく来れたわね…この人殺しっ…」
龍の葬儀の日、私は家の前で追い払われ、家に帰った。
そして
「何してるのっ…やめなさいっ…」
家にある全てのアルコールを飲み干した。
死にたかったのか、どうなのかすら覚えていない…
それから三度、私は急性アルコール中毒で運ばれた。
三度目の退院後に母が床下から出してきたのは、母が作った梅酒だった。
「…今度お酒が欲しくなったら母さんも一緒に飲むから…」
母なりに考えて、考えて、出した答えだったのだろう…
私は母から梅酒を受け取ると一口含んだ。
甘く広がる梅の香りが鼻から抜け、龍が死んでから、ようやく私は涙を流した。

その後、落ち着いた私の元に友人から届けられた小さな箱…
あの日受け取るはずだった私への誕生日プレゼント。
シルバーのペアの指輪だった。
その小さな箱に紙切れが入ってて、‘結婚しよう、いつか’そう…なぐり書きで書かれてあった。
私はその指輪に誓った…龍以外の人とは幸せを求めないと、龍以外の人を愛さないと…
だから邪魔だった…あんな感情(もの)。
だから許せなかった…少しずつ瓜生に惹かれていく自分が。


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