トシキ@-6
「なになに‥‥‥‥巨大チャーハン30分以内に食べきれば、一万円プレゼントか‥‥‥バカめ!!トシキ様をなめるな!!!」
トシキはすぐにテーブルに着き、巨大チャーハンを注文した。
気分はギャル曽根、顔のデカさはジャイアント白田クラスである。
「はいよっ!30分以内に食べきれば1万円!!頑張りなっ!」
店のオヤジがチャーハンをドンッと置いた。
「いっただっきまーす!」
アチョッとばかりに食べだしたトシキ。だが、トシキの腹は2分で限界を告げた。
「はいざんねーん。チャレンジ料金三千円だね」
言い慣れた口調とにやけたオヤジの顔にムカついたものの、トシキはその怒りをなんとかその場でこらえた。
「お客さん、早くお代を払ってくださいよ」
店のおやじは少しキレ気味で言った。
「さ‥‥ささささ‥‥三千円!!!!!!??」
もちろんトシキは一文無しだ。
「まさかアンタ、金が無いってんじゃねぇだろうな?」
おやじは声をあらげてトシキをにらみつけた。
トシキは、万引きGメンに説教されているような気分を覚えた。過去に2回、トシキはスーパーニュースに出演しとことがある。顔にモザイクをかけられて・・・
「す、すす、すいません!!この店でしばらく働くんで、警察だけは勘弁してください!!!」
トシキは焦っていた。警察に連行され身分を暴かれれば、砂漠でこの村の村長をボコったことがバレてしまう恐れがあるからだ。
「まぁ俺も鬼じゃねぇ。俺の言うとおりしばらく働いてくれれば、警察には黙っててやる。そのかわり貴様に自由は許されない。覚悟しとけ」
自由がない‥‥‥その言葉を聞いてトシキはSMプレーを連想していた。
「貴様!何、ニヤニヤしてやがる!!早く来んかぁ!!!」
「ヘイッ」
トシキとオヤジは裏口から店に入っていった。
世界一の料理人になる・・・トシキはそんな下心を抱きながら店の厨房に入っていったのだった。
「トシキ!この料理を9番テーブルに!!」
「トシキ!買出し!!」
「トシキ!皿洗い!!」
「トシキ!ポチにエサ!!」
「トシキ!トシキ!トシキトシキ・・・・・」
店の手伝いはトシキの想像をはるかに絶していた。トシキは身も心もボロボロになった。
「こんな店、今日でやめてやる・・・」
トシキはそう思った。が、もちろんやめられない。
「おいトシキ!そろそろ寝ろ。明日は朝の4時から買出しだからな。お前の寝床は外の倉庫に用意してやった。」
時計を見るとすでに午前2時を回っていた。
「ひ、ひぃ・・・・2時間しか寝れないじゃないか・・・・・・こんなの人間の扱いじゃねぇ・・・・俺はデリケートな生き物なんだ!!」
乙女心を傷つけられたトシキの自尊心は一気に膨れ上がり破裂した。トシキの全細胞はオヤジへの復讐を誓っていたのだった。
トシキはオヤジに言われたとおりに倉庫へ向かうと、さっそく逃げる準備を始めた。
こっそりと厨房でくすねておいたフランスパンをリュックに入れると、忍び足で店の正面門に向かった。出入り口はその門だけであり、周りは高い外壁に囲まれていた。