トシキ@-4
「‥‥ん?おい、須藤じゃねぇか!どうした!?こんなとこで!」
トシキはおもいっきり叫んだ。ここは砂漠のど真ん中。もちろん須藤なんていない。
「だ、誰だ!!?」
6人の男達はいっせいに後ろを振り返った。
「今だ!!!!!」
トシキはリュックから10キロのダンベルを取り出すと、それで男達に殴りかかった。
(バキッドコッベキッ)
トシキは男達を倒した。30キロではなく10キロのダンベルを持ってきたのは正解だった。おもいっきり振り回すことができたからだ。
「よし、こいつらから食糧をいただくか」
トシキは男たちの体を隅から隅まで調べあげた。パンツの中はもちろん、金玉の裏まで念入りに調べた。
「ちっ‥‥‥乾パン5枚しか見つからなかった。こいつらも切羽詰まってたみたいだな。」
トシキはその場で全部食べ尽くした。トシキは計画性のない男だ。
「ん?胸ポケットから紙切れが出てる」
トシキはその紙切れを手にとってみた。
それは何とフェリーのフリーパスだった。
「キンタマンタ島行きか‥‥‥‥たしか、ジャパンに行くにはここを経由しなきゃ行けなかったよな。ちょうどいいや」
トシキはフリーパスを手に入れ、再び西へと歩き出した。
「ふぅ‥‥‥もう夕方か‥‥」
トシキは途方にくれていた。テントも何もない。夜の砂漠をどう過ごせばいいのか、考えただけで恐ろしかった。
「やべぇ‥‥一人じゃ寝れるわけねぇ‥‥‥クマ五郎も連れてくるんだった‥‥
‥」
クマ五郎とはトシキの大切にしているクマのぬいぐるみだ。トシキは一人っ子だった。だから寂しくないようにと、小さい頃に近所にうろついていたあやしいオヤジがくれた物だ。
そのぬいぐるみに盗聴器が仕掛けられていたことは言うまでもないだろう。
「あぁ‥‥夕日が沈んでく‥‥‥‥クマ五郎‥‥‥‥助けてくれ‥‥‥」
トシキは寂しさのあまり、泣きだしてしまった。と、その時
「‥‥‥ん?なんだアレは?」
トシキは前方に石の塊を発見した。一見、遺跡のように見えた。
「ビックチャーーーーンス!!」
トシキは全力で走った。浜辺で彼女を追い掛けるイメージで走った。
「‥‥‥‥ん?もしかして、アレは村じゃないのか?」
遠目で見た石の塊は、村を囲む外壁であった。
トシキは村の入り口に歩み寄った。入り口には門番が二人立っていた。
「キサマ、どこから来た!砂漠の中を半袖短パンとはなめてるとしか思えん。夜の砂漠は氷点下まで下がる。覚えとけ!」
門番の1人が話しかけてきた。
だが、その忠告はトシキの左耳から入って右耳から抜けていった。トシキの脳みそは50年前のパソコンよりも性能が悪かった。