聖なる夜に…-5
[ほう、面白い。じゃあもしオレがオマエを買うと言ったら?オマエは承諾するか?お互いシャワーを浴びたばかりだ。手っ取り早いぜ]
敦は含み笑いを浮かべる。沙耶は感情的になって冷静な判断を欠いた発言をしていまう。
[い、いいわよ!言っときますけど、私高いからね!]
敦はポケットから財布を取り出して札を抜き取ると、
[ヨシ!ここに10万有る。これでオマエを買った]
"10万円!!"敦が簡単に言った金額に沙耶は息を飲んだ。敦はそれを沙耶の前に置くと、服を脱ぎ出した。
[どうした?オマエも脱げよ。まさか"買う"って意味を知らない程お子ちゃまじゃあるまい]
ネクタイを外し、ワイシャツのボタンを外す敦を眺めていた沙耶は、トレーナーに手を掛けようとして躊躇していた。
[手伝ってやろうか?]
"最後の一枚を取り去り裸になった敦は、沙耶に近寄るとトレーナーの裾をたくし上げてブラジャー越しに彼女の胸に触った。痙攣にも似た硬直を見せて耐えている沙耶。敦はさらにジーンズのボタンを外しジッパーを開けながら手を差し込もうとした瞬間!
[イヤーー!!!やっぱりイヤー!]
あらん限りの力で敦を跳ね除けた沙耶。両手で胸を被い、両足はしっかりと閉じていた。それを見た敦は笑って、
[そうそう……そうやって歳相応に生きるんだ]
敦は笑いながら下着を着けて布団を敷いた。
[あいにく一組しかないから半分づつな]
敦はそう言うとさっさと明かりを消して布団に入った。暗闇の中、沙耶は先程の出来事のインパクトで直ぐには動けず、布団の敦をじっと凝視していた。
敦が布団に入ってから30分程経っただろうか、沙耶は仕方なく敦のいる布団に入った。
沙耶が布団に入ってどのくらい経っただろうか…眠れない…疲れているのだが気持ちが奮ぶって…と思っていた時だ。
[明日、夕方…また来い。明日はクリスマスだ…]
敦の言葉に身構える沙耶。しかし敦は、それきり何も喋らずに寝息を立てだした。背中越しに彼の"体温"を感じた沙耶はいつしか眠りについた……
数時間眠っただろうか、奮かぶる気持ちのためか浅い眠りから沙耶は覚めた。携帯の時計を見る。まだ6時15分だ……ゆっくりと隣を見ると、敦はまだ夢の中だった。沙耶はそっと布団から這い出ると、閉じられているブラインドから外を覗いた。外は白んでいた。
[何してんだ?]
予想しない声に沙耶は"きゃあ!"と奇声を挙げる。
敦は軽くたしなめるように、
[静かにしろ。そろそろ警備の巡回時間だ。7時を過ぎたら一端帰れ。そして、夕方6時にこのビルの正面玄関に来い]
7時になった。敦は沙耶を連れてエレベーターに乗ると、裏出口から彼女を外に連れ出した。