聖なる夜に…-3
[オマエ、名前は?]
敦が用意したカップ麺を二人で食べながら、彼が女の子に言った。
彼女は食べながら、
[……秋元…沙耶…]
[歳は?]
[……14……]
敦はポケットからキャメルを取り出し、火を着けた。
[14か…14のガキがあんな時刻にあんなトコで何を待ってたんだ]
[………]
沙耶は答えない。
[まさか男漁って遊びに行こうってんじゃないよな。そのナリじゃ]
確かに沙耶はジーンズにトレーナーと、"そういう趣味"の男以外には見向きもされないような格好だった。
[まあいい…今夜ここで寝て、明日は家に帰るんだぞ]
敦のタバコの煙が青白い色で天井を漂う。
[……帰りたくない…]
敦はゆっくりと沙耶の方へ身を向けた。
[なんだ!家出か。じゃ原因は親とのモメ事か]
沙耶の頬が赤く染まるのを敦は見ながら、
[図星か……マッ、オマエが悪いんだろう?]
沙耶はうつ向いたまま、
[…確かに私が悪いわ。でも!だからって…あんなに…]
なんの事はない。大人としての主張を訴える子供と、それを抑えようとする親との確執か。
敦は強い気持ちで沙耶に言った。
[食わせてもらってる身分で何、主張してんだ?]
敦はいつの間にか缶ビールを呑んでいた。
[そんな事言ったって…私の顔見ればガミガミ怒るんだよ!昔はあんなに優しかったのに…]
敦は突然、大きな声で笑い出した。
[ハハハッ!!大きなナリしてまだ小さい子みたいに扱われたいのか?"社会"に出ても迷惑を掛けない人間になるように躾てんのさ。立派な親だぜ]
沙耶は敦の態度に怒ったのか彼を睨みながら突然、缶ビールを手に取ると一気に半分ほど呑んだ!
敦は慌てて沙耶から缶ビールを取りあげて、
[何してんだ!ガキの呑みモンじゃねえぞ!]
[ウルサイ!アンタも母親みたいにガミガミ言うな!]
初めてのアルコールが一気に廻り、沙耶の心に溜っていたモヤモヤが一気に吹き出し敦に向けられた。
彼にとっても沙耶にとっても忘れられないクリスマスが始まった……