刃に心《第21話・一戦去って、また一戦》-2
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自室に朧を案内し、勉強する時に使う椅子を差し出すと、疾風はベッドの上に腰掛けた。
「此処が疾風さんの部屋ですかぁ♪私、男の人の部屋に入ったのって初めてなんですよ♪何かドキドキします♪」
蠱惑的に微笑む朧に疾風は苦笑いを返す。
「で、話とは?」
「疾風さん。疾風さんはこれは見ましたか?」
朧はそう言うと、一枚の黒く染まったチラシを取り出した。
『来たれ!裏社会の戦士達よ!』
チラシはそんな微妙な書き出しで始まっていた。
「いえ。見てませんけど…」
「おかしいですね…。疾風さんにも届いていると思ったんですが…本当に知りませんか?」
不思議そうに朧は首を傾げた。
だが、疾風がこの紙を見たのはこれが初めてである。
こんな微妙な謳い文句のチラシなら忘れない。
「時間もあまりありませんので私が手短に説明しましょう。その紙はある大会のお知らせなんです」
「大会?」
「ええ。毎年、ある秘密組織が開催しているの大会です。主催者は不明、開催時期も知らせが送られてくるまで全く分かりません。
その大会がこの街で開かれます。そこで、私とともに出ていただけませんか?」
疾風は朧の言葉を反芻した。
(何だかよく判らんが…大会があって、それに出て欲しいという訳か)
何とも怪しさ満点、如何わしさ100%な頼みだが、自分の力を認めてもらっている訳なのだから断るのは気が引ける。
「判りました。いいですよ」
疾風が答えると、朧は一瞬───ほんの一瞬だけ唇をニヤリと歪めた。
「ありがとうございます♪」
「で、日時は?」
「明日です♪」
疾風は我が耳を疑った。聞き間違いかと思われたが、相変わらず朧はにこにこと微笑んでいる。
「正確には明日、日曜日の深夜0時から私達の母校である日ノ土高校で行われます」
「…急ですね」
「説明した通り、この大会はいきなり開催されるんです」
「…裏社会は何でもありですからね。それで、先輩の真の目的は何ですか?先輩が名誉を求めるとは思えませんけど」
「疾風さんは私をそんな目で見ていたのですね。ちょっぴりショックです」
朧は少し頬を膨らます。だが、すぐににんまりと笑うと疾風の横に座り直した。
「まあ、その通りなんですけどね。私の目的はもっと俗物的なものです♪」
「俗物的?」
疾風がそう聞き返すと朧は下から覗き込むように疾風を見つめた。
「ふふ♪疾風さん、温泉は好きですか?」
「好きですよ」
「私と温泉、どっちが好きですか?」
「温泉です」
「きっぱりと言う疾風さんも私は大好きなんですけどねぇ♪」
「で、温泉がどうしたんですか?」
「実はですね。この大会の副賞は何名様でもOKの温泉旅館宿泊券なんです。
だから、私と二人っきりで温泉に行きません?」
疾風は耳がおかしくなったのかと思った。
すると、疾風が聞き間違いかどうかを問い質す前に、朧はスルリと疾風の首に両手を回した。