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無糖コーヒーと無機質なケータイ
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無糖コーヒーと無機質なケータイ-3

浜辺を一人で歩く。
時々鼻をすすりながら。
この季節は嫌いだった。
花粉が俺の敵だから。
すするたび思い出す。 俺は生きているんだって。
空の青は、俺を慰めてる様には思えなくて。
俺は一人、叫んでいた。
『うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ』
やはり心は形を持たなかった。





いつか夢に見た景色に似ていた。
私はケイジと手を繋ぐ。
そんな事望んでないのに、手を繋ぐ。
暖かいけど、ウソッぽい。
母さんが手を降っている。
その顔はひどく曖昧で、ぼやけた感じでしか思いだせない。
機械みたいな、そんな感じだった。
夢は母さんの顔を見る前に終わってしまう。

続きを見たいとは思わないけど。

何故か寂しそうに見えた白い雲に、私はひどく同情した。
雲は少し、笑った様に見えた。





白い雲が消えていく。
青く広がる広大な空に。
雲は俺を笑ってるみたいで、何故か兄貴の横顔を思い出した。
バカだな、お前。
鼻で笑う兄貴が隣にいる様な気がした。
なるほど雲は、俺なんか見ちゃいないんだ。
また一人で歩きだした。





またケイジからメールが来た。
うっとうしいから無視する事にした。
いつも私の機嫌ばかりうかがうアイツの顔がとても憎たらしかった。
アイツの血を引いてると思うと寒気がした。

母さんが好きだった。
今はいない、母さんが大好きだった。
母さんが死んだのはケイジのせい。
ケイジはそれを認めてる。

すなくとも、アコ、お前のせいじゃないよ?

そんなのわかってる。
だってあなたのせいだから。
ケイジは一人で背負ってく。
私と病気と、死んだ母さんを。

何故か苦いコーヒーの味が恋しくなった。
ケイジが好きな無糖コーヒー。





カンコーヒーを買った。
兄貴が唯一ダメだった無糖コーヒー。
渋い顔する兄貴の顔を思い出してなんだか可笑しくなった。
冷たいコーヒーを飲まずにそのままポケットに入れた。
布越しにヒンヤリとした感覚が伝わってくる。

無糖だけはダメなんだ。

兄貴は優しくそう言った。 俺は次の日からコーヒーを飲むようになった。
やはり飲もうと思ってカンに手をかける。
俺は苦いコーヒーをすする。
心は乾いたままだった。


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