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無糖コーヒーと無機質なケータイ
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無糖コーヒーと無機質なケータイ-1

…兄貴が死んだ。…





『無糖コーヒーと無機質なケータイ』
ひとしきり新聞に眼を通した。 対した記事は載ってない。
冷めたコーヒーに口をつける。はっきりいって不味い。

春が過ぎて、学校では仲間作りに余念がないこの時期に、私は長期の休学をとった。
次に学校にくるときは私に友達なんてものはないのだろう。
やはり寂しいが、それはそれで仕方ないのだろう。
昔から付き合ってきた病気とお別れできるのだから。

今日から私は通院先の近くの親戚の家に泊まる。
なれないベッドのせいで逆に疲れを覚える身体を起こし、親戚のおばちゃんに挨拶をする。
リビングにでると既に朝ご飯は出来ていた。
家の親とはえらい差だ。
また不味いコーヒーをすする。
口に含むたび不快感は増していく。
何故、気持ちのいい朝にこんなに不味いものを飲むのか。
口には出して言わない。

「おはよう、アコチャン。良く眠れた?」
不意に後ろから声がかけられる。 私は新聞から眼をはなす。
『おはよう、おばさん。良く眠れたよ?ありがと』
とりあえず言っておく。
なにもわざわざ機嫌をそこねる事を言わなくても良いと思うから。
「ふふっ。良かった。 なんか不備があったら言ってちょうだいね? ケイジさんからはあなたの事をよろしく頼まれてるから」
『うん。今の所大丈夫。ありがとね』
ケイジと言うのは私の父親。 どんな漢字を書くかは忘れた。
…私はまた、不味いコーヒーに口をつけた。





俺が殺した。
…みたいだった。
良く出来た兄貴だった。
勉強も運動も、仕事も。
俺に出来ない事はほとんど出来たし、あの親にも優しかった。
だらしのない親の面倒も良くみていたし、 親戚の評判も良かった兄貴が…
死んだ。





なんとなしに外にでてみる。 眼の前には青い海、白い雲、広がる地平線。
なにもないこの町唯一の見所だろう。
なんの代わり映えもしないこの日常の世界に、これからの1ヶ月を夢見る。
期待に胸踊るのを感じた。
なにかが始まる。
そう思えた空だった。

真新しい自転車にまたがる。
この町で過ごすのに必要だからと、ケイジが買ってくれた物だった。
ケイジがくれた物にしては、ことの他気に入ってる品物だ。
新しい自転車は速さを増してく。
傾斜が多い。
私は空へ、翔べる様な気がした。


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