ツバメD-3
数日後、千川くんが仕事を休んだ。
体調不良だとは聞いていたけど、昼休みに電話をしてみた。
『……あっ、もしもし』
「綾瀬さん……」
声には力がない。
『大丈夫?』
「うん…」
『風邪?』
「いや…」
なんだか口ごもる千川くん。
『どうしたの?』
「……はは、ふられちゃった」
『……』
リアクションしなくてもわかる。
福岡くんに…想いを告げたのか…
最初は気のせいだと思っていた。
けど、やっぱり本気だったみたい。
そりゃあやっぱりガッカリだよ。
でも、何度も相談されていくうちに、恋心よりもなんだか友情のほうが強くなっちゃった。
それにしても、男が男をが好きになるってすごいな。
あたしは別に気持ち悪いなんて思わないし、逆に尊敬するかも。
自分の気持ちを貫けるんだから。
「綾瀬さん…?」
『あ、ごめん』
また考え事してた。
「はは、また彼氏のこと考えてた?」
『えっ、違うよー!』
「あはは」
千川くんは元気になっていた。
『大丈夫?』
「うん、なんだか綾瀬さんに元気もらえた」
『よかった…』
あまり言葉が見つからないけど、千川くんは大切な人だから。
その…友達として。
『明日は出勤しなよ!』
「うん!じゃあ明日!」
電話の向こうで千川くんは、あたしの大好きな笑顔を見せていたと思う。
電話を切ると、もうひとつのことしか考えていなかった。
燕に謝ろう。