秘密〜蒼い天〜-3
3 秘密
〜蒼い天〜
「え?」
居間でくつろいでいるところを無理矢理連れ出され、何かと思えば。
『婚約解消したい』
突然言われた。今まで一度もそんな事言わなかったというのに。
「何で?」
少し苛立ったように目の前の少女―菖を見つめる。
「ごめんなさい。でも、私ー・・・」
「なに?恋人でもできた?」
こくん、とうなずく。
「ー・・ダレ?」
「哉嗣、それは言えない」
「・・・っ」
胸が痛む。・・やっと、『哉嗣さん』から抜け出せたのに。
「あの、教師か?」
「え・・・?」
「『楸和馬』」
「っ何で、」
ー当たり、か。嬉しくもない当たりだな。
「悪いけど、婚約は解消できない。あれは父さんが決めたことだからな」
「哉、」
「悪い、俺これから用事有るから」
「哉嗣」
「じゃあ、」
足早にその場を去る。
「っ何なんだよッ!!」
ガァンッ
壁に奴当たりをしてしまった。
「菖・・・」
好きなのに、
「俺じゃ、駄目なのか?」
ー女々しいな。
「なぁーにやってんだ?」
ぴと、と缶を頬に当てられた。
「達也」
覗き込むようにして見られる。
「何やってんの?」
再び同じ質問をされた。
「ー・・・昼寝。」
「まあステキ。哉嗣君は目を開けて寝るのねぇ」
「うるさい。」
「まあ、察するところ、振られたって感じだな。相手は・・・、妹ちゃん」
ームカつく。妙な所で勘が良いのだから。
「お前、嫌い」
「酷い言いようだねぇ、お兄さん」
「で、妹ちゃんに振られたままにしておく気か?」
「他にどうしろと?」
「お前らしくないな。ー・・・・例えば、その男に会いに行くとか」
ーあれ?
「・・俺、振られた理由言ったっけ?」
「げ」
ー『げ』?
不思議そうに達也を見る。
「何で知ってんの」
「や、それはー・・」
がっ、と腕を掴む。
「何でー・・っ」
「はい、ストップー」
突然目の前に手が出てきた。
「な・・・っ」
驚いて手の主を見る。
「責任は、俺。達也は関係無いから」
「・・誰ですか」
「え?ああ、ゴメンゴメン」
あはははは。
二十代の半ばぐらいだろうか、年に似合わず、子供のような笑い方をする人だ。
「俺、桐榮翔。よろしく」
「・・『桐榮』?」
ー何処かで聞いたことがあるような・・。
「俺の姉貴の旦那」
「加那さんの?ー・・・成程」
「後、和馬の幼馴染み」
忘れないでね、と笑う。