つかの間の愛情-4
恵子の部屋は女の子らしく、壁や天井にアイドルのホスターが貼られ、ぬいぐるみがベッドを上を占領していた。中学の時付き合ってた彼女の部屋は、これほど女の子らしくなかったから一巳は少し照れていた。
恵子がコップに氷を入れてコーラを持って来た。"2月の寒いのにコーラ?"と一巳は思った。すると、押し入れの奥から何やら小さな黒いビンを取り出した。ウイスキーだ!
[これをコーラに入れて飲もうよ]
[オマエ、それ…]
[兄貴から前に飲ませてもらったら、美味しくって。それで自分で買って隠してたの]
一巳はコップ半分ほどを一気に飲んだ。初めて飲むコーク・ハイは美味しく思えた。もともと中学の頃からアルコールは飲んでいた。地域のスポーツ・イベントには必ずかり出された一巳は、大人達に混じって宴会に参加していた。ただ、そこではビール以外飲んだ事はなかった。
飲んだ後、一気に腹の中が熱くなり酔いが廻るのを一巳は覚えた。
[何だ?誰もいないって]
コーク・ハイで熱くなった頭で一巳は訊いた。恵子も少し酔っているようだ。頬を赤らめ、目も虚ろだ。
[親たちは会社の慰安旅行。兄貴は彼女とお泊まりだって…]
一巳はどう答えて良いのか解らずに黙って二杯目のコーク・ハイを飲んでいた。普段、大人ぶった話し方をしている一巳だが所詮16歳の男の子だ。高まる鼓動を気付かれはしまいかと、冷静さを保とうと必死だ。
すると、恵子は対面に入っていたコタツを出ると一巳のとなりに入ってきた!
[なにしてんだ!]
避けようとする一巳に恵子はワザと身体をすりよせてくる。完全に酔ってるようだ。
一巳は恵子の腕を取り、力任せに倒した。恵子の上に一巳がおおい被さるようなカタチになった。お互いの顔は20センチと離れていない。
[オマエいい加減にしないと襲うぞ!]
後に一巳はこの言葉を言った事を後悔した。
恵子は真剣な顔になり、
[良いよ……一巳さんとなら…]
その時、一巳は部屋の灯かりを消して恵子を抱えた。恵子は腕を一巳の首に回した。彼女をベッドに寝かせると、一巳は欲望の全てを彼女にぶつけたのだった……
…[つかの間の愛情 前編 完]…