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つかの間の愛情
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つかの間の愛情-3

[そう、この2年間アイツはオマエが来る度に髪をとかしたりリップを塗ったりしてたんだ。そんなアイツを見て何とかしてやりたいと思うのが普通だろう]

一巳はしばらく黙って考えていた。青木の事だ。"普段いい加減なヤツに見えるが、妹の事にこれほど真剣になるなんて"と。

さらに追い討ちを掛けるように青木は、一巳に訊いた。

[なぁ一巳、オマエが中免を取る時、少しでもオレに恩義を感じてるんなら恵子を頼む]

一巳はこの兄妹の関係をうらやましく思っていた。そして、

[分かった。で、妹の好みのデートは?]

[そんなのはどうでも良いよ。要は初恋のオマエとデート出来る事が大事なんだから…]


その日は雲ひとつ無い快晴だった。8時、眠い目をこすりながら一巳は起きて来た。日曜とあって母はまだ夢の中だ。起こさないように洗面所で顔を洗うと、お湯を沸かしてカップ麺を食べる。そして、部屋で服に着替えた。

黒いスリムのジーンズに薄いグレーね長袖Tシャツ。そして黒の革ジャンといういでたちだ。そしてバイクに跨ると、恵子の待つ病院へと走り出したのだった……

9時50分。恵子は既に病院の入口前に立っていた。そして、一巳が表れるであろう方向をじっと眺めている。恵子は腕時計を見る。10時5分前だ。その時、前方からけたたましい音を出しながら一巳が表れた。

[すまん、遅れたかな?]

一巳の問いに恵子は頭を振って、
[いえ。今、10時5分前。私が早く来たの]

バイクに乗るためか、ジーンズに赤いシャツ、上にGジャンを羽尾っている。髪も降ろしていた。

[じゃあ何処か行きたいトコあるか?]

恵子は"ンー"と口を結んで考えて、
[一巳さんとなら何処でも良いよ]
この答えに今後は一巳がしばし考えてしまった。

[じゃあ、…映画でも行くか]

[うん!]

一巳が用意したジェット・ヘルを被るとバイクのバック・シートに股がった。しかし、腕は一巳の腰に掴まっているが腰が退けているため、どこか変だ。
一巳は恵子に、
[もう少し身体をくっつけて]

恵子の体温が一巳の背中に伝わる。

[そう、そのくらい。じゃ出発するぞ]

クラッチを切り、ギアをロォに入れるとバイクはゆっくりと走り出した……

恵子とバイクでデートしてから4ヶ月が過ぎだ。あれから月に一回は"どこかに連れてって"とせがまれ、一巳は付き合わされていた。

しかし、最初は青木に頼まれて仕方なく行っていたが、特に付き合っている娘もいなかったし、バイト三昧の日々の息抜きには恵子はちょうど良い存在だった。

一巳は次第に恵子を意識するようになった。

[今日ね、アタシひとりなの]
4回目のデートの帰り、恵子は一巳にとってショッキングな内容を耳打ちした。

いつもなら帰りは自宅近くに降ろして別れるのに、その日に限って部屋に通されたのだ。


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