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つかの間の愛情
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つかの間の愛情-2

[オマエ自動車学校いくらか知ってるか?7万だぞ、そんな金有るかよ]

青木は笑いながら答える

[オレのバイク貸してやるよ。それで練習して試験場で受ければ安くあがるゾ]

それからしばらく一巳は学校が終ると家に帰らずに青木の家に行って練習を重ねた。そして、試験場で中免の試験を受けた。最初は要領が分からず落ちていたが、5回目の試験でようやく免許を取った。

免許を取れば次はバイクが欲しくなる。一巳は知り合いのバイク屋に頼み込んで、月2万の分割払いでヤマハのRZ250を買った。

[青木、オマエのおかげだ。たいしたお礼も出来ないが…]

一巳はそう言ってマールボロを1カートン渡した。

青木はそれを黙って受け取った。
[ねえ、藤野…さん。バイク見せて]

そう言ったのは青木の妹、恵子だ。肩までの髪を後ろで束ねている。おでこがチャーム・ポイントだ。兄に似ず可愛らしい顔をしていた。
一巳は破顔しながら、

[ああ、見てくれ!中古だけど1,000キロも走ってない掘り出し物だ。まだ馴らしも済んでないんだ]

三人は一巳のバイクを眺めていた。真っ黒な車体にゴールドのラインが印象的なバイクだった。

恵子はバイクの周りを廻りながら眺めて、

[兄貴のよりかっこいい!]

と、言った。一巳は照れながら、
[ありがとう]

とだけ言った。すると恵子はどう思ったのか、一巳に"お願い"と言って、

[ねえ!これで、デートに連れてってよ]

[エッ!]

"なんで中坊のオマエとデートを?"と、口から出掛ったが飲み込んだ。そして青木の顔を見ると、片手を顔の前で伸ばし"すまん"というポーズしている。それを見た一巳は、諦めの表情で恵子に言った。

[分かったよ。じゃあ…日曜の昼間でいいか。10時頃で…]

恵子は両手を上げてジャンプすると、
[ヤッターッ!!一巳さんとデートだー!じゃあ、家じゃまずいから…近く病院の入口の前で10時で]

一巳はひきつり笑いをしながら"分かった"と言って帰っていった…

その夜、青木から電話が入る。内容は妹の事だった。

[昼間は妹がすまなかったな。アイツさ、オマエにゾッコンなんだよ]

聞けば一巳が中学生の頃、初めて青木の家に遊びに行った時から一目惚れらしい。

電話を受けながら一巳は顔が赤らむのを感じていた。

[オマエん家に初めて行ったって…中2の頃だぞ。だったら小6の頃からか!]

一巳は"冗談だろう"と言いたげに笑い声を交えて話した。が、青木の声は真剣だった。


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