友達百人できるのか?-4
「澤田さん…いいじゃないですか。友達百人できなくたって。数の問題じゃないです。わたしは、澤田さんと一生友達ですよ」
「斎藤くん…」
顔を上げた澤田は若干泣きそうだった。
やっぱりなんかめんどくさい。
「斎藤くーん!」
泣きながら、わたしに抱きつこうとする。
「やめてください。セクハラですよ!」
こんなとこ、誰かに見られたら恥ずかしい。
そう思って周りを見ても、閑静な住宅街に人影はなく、塀の上にのんきそうな猫が寝そべっているだけだった。
なんだ、猫か…。ん?猫…。
「澤田さん、ひとつ提案があります」
感動の涙を流す澤田を冷たい目で見ながら、わたしはあることに気がついた。
「なに?僕の友達の斎藤くん」
「その呼び方はやめてください。澤田さんの友達って誰と誰と誰でしたっけ」
「えーと、かねやんと井上とマスタシュと、あと斎藤くんだよ…あ…」
澤田も気づいたらしい。
「そうですよ、マスタシュは猫ですよね。猫の友達、たくさんつくればいいじゃないですか」
「…そうか…!なんで気づかなかったんだ!そうだ、この近くに猫の集会が開かれる公園があるんだ!ちょっと行ってくる!」
澤田はそう言うと元気よく走り出していった。
あ、しまった。仕事させるんだったのに。
「…まあ、いいか。帰ろう……あほらしい…」
夕日がやけに目に染みた。
後日、澤田は「猫の友達が96人できた。僕はもうモテてモテて困っちゃうよ」と言っていた。相変わらず仕事をサボり、コーラを飲みながら。わたしは、「澤田さんと一生友達」と言ったことを密かに後悔していた。澤田は記憶力が無駄にいい。
「僕の一生の友達の斎藤くん。コーラおかわり!」
この呼び方も案外嫌いじゃない。わけでもない。やっぱりいやだ。
「僕の親友の斎藤くーん、早くコーラ!」
転職しようかな…。