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友達百人できるのか?
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友達百人できるのか?-3

「途方もないですね…。ていうかわたしも澤田さんの友達なんですか」
「え、斎藤くんは友達だよ。オレたち友達じゃん?」
少し無理がある。
「じゃあ、これからタメ口でいいですかね」
「いいよ。タメ口で。僕は心広いからね」
「じゃあ、失礼して…おい、澤田。給料あげてくれよ。あと仕事しろ」
澤田さんびっくりしてるなあ。
「あ…やっぱりタメ口はやめてくれる?あはは、ドキドキした…」
「…はい、じゃあ、わかりました。…でも、友達ってことは、気兼なくなんでも言っていいですよね?」
「え…うん、まあ」
「じゃあ…澤田さん、給料あげてください。あと仕事してください。子供みたいにコーラばっかり飲まないでください。ゲップくさいです。それから…」
「やっぱり、斎藤くんは部下ってことで!」
「…そんなあ…」
澤田の意気地無し。
「よし、『友達百人できるかな作戦』残り97人からスタートだ!エイエイオー!」
こうして『友達百人できるかな作戦』は始まった…。


「やっぱり無理があると思うんです。帰って仕事しましょう。平日の昼間にこんなことするもんじゃないです」
わたしと澤田はうららかな春の日差しの中、住宅街を練り歩いていた。
澤田はいかんせん、所員の二人しかいない探偵事務所の所長である。
友達をつくろうにも出会いがない。
そこで、「道で会った人に友達になってくれないかと頼んでみる作戦」に出たのである。
成功する気がしない。
「なにか趣味を見つけたらどうですか?そうすれば仲間ができますよ。お料理教室に通うとか」
「料理好きじゃない」
「じゃあ、ゲートボール始めるとか」
「スポーツ嫌い」
「…だいたい、これ仕事じゃないです。わたし戻っていいですか」
「これも立派な仕事。調査だよ。友達百人できるかどうか」
「調べたって、お金になりませんよ…」
「お金にならなくても、世の中の謎を解明するのが探偵の仕事だよ。黙ってついておいで、斎藤助手!」
斎藤助手…。
「…そう呼ばれると弱いんですよねえ…」
「頼りにしてるよ、斎藤助手!」
「…任せてください。澤田探偵!」
わたしはまんまとのせられてしまった。
しかし、犬猫探しは得意なわたしも、澤田の友達になってくれる人を探すのは困難を極めた。
だいたい、平日の昼間なのだ。
主婦や、ご年配の紳士、淑女が澤田のような男と友達になってくれるわけない気がする。
道で会う人は皆、澤田が「こんにちはー」と爽やかな(自称)笑顔で近寄っていくと、「こんにちは」と返してくれ、「今日はいい天気ですね」「そうですね」と会話はしてくれるものの、「どうです。僕と友達になりませんか」と澤田が切り出すと、皆不審そうに離れていってしまうのだ。
当たり前だ。
わたしだっていきなり澤田のような男にそんなこと言われたら、逃げる。
澤田の度胸は褒めたいが、早急過ぎるんじゃないだろうか。
「なんでなんだろうな、斎藤くん。僕のどこがいけないんだろうか」
澤田は11人目に声をかけ、逃げられた後で、すっかり落ち込んでしまった。
「焦り過ぎです。この方法じゃ誰だって友達できませんよ」
「ゲップくさいからかな」
あ、さっき言ったこと気にしてる…。
意外とナイーブなんだな。めんどくせえ。
「今日はもう帰って仕事しましょう。ゲップくさくないですし」
「いいよ、そんな慰めなんて。僕には友達百人なんてできないんだ。この作戦は失敗だ…」
ホントにめんどくさいな…。
ほっといて帰ろうかな。


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