天藍-2
朝、目を覚ますといつもより少しだけ早いことに気が付いた。
「ナニ、気合い入ってんの?」
ため息混じりにそう呟き、昨日、母が大絶賛していた制服に手を通す。
「あらっ!おはよう。早いじゃなぃって――。すごく似合ってるわ!!!かわいぃっ!!食べちゃいたい!!」
「なっ、何言ってんだよ母さん。ご飯は?」
「あぁ……。もう出来てるわよ。食べてちょうだい。」
母の言動に寒気を感じながらも、学校に行く準備を済ませていく。
そうして、学校に出発―。
「おぉっ!!君が凛鵡君かぁ。」
職員室に入ると。担任と思われる、男が声をかけてきた。
「はい。夢海 凛鵡(ムカイ リンム)と言います。」
ここでも、もちろん笑顔を絶やさずにっこり笑う。
「まぁこい。お前の担任の斉藤 和希(サイトウ カズキ)だ!呼んだら、中にはいれ。」
いつのまにか教室の前。斉藤は教室に入る。中の会話は丸聞こえだ。
「えぇっとーー。今日はみんな知ってると思うが。転校生が入る!!」
「女ですかー?男ですかーー?」
お決まりの質問。バカらしぃ。
「まぁ、落ち着いて聞け。俺が思うに、今回は結構やばいぞ!スッゲェ美人なんだこれが!!んじゃぁ、はいれ。」
『ガラガラ』
教室が騒つく。女子の顔が赤いのがわかる。
「夢海 凛鵡と言います。わからないことが多いのでよろくしお願いします。」考えていたとおりに、スラリと言い、最後にトビッキリの笑顔で笑う。
大抵のものが顔を赤くして黙り込んだ。
これで…、僕の薔薇色人生は決まった!!心のなかでそう言い切ったその時!
『ガタッ!!』
激しい音と共に一人の男子生徒が立ち上がりこちらに向かって歩いてくる。
「どうした??燈志(トウシ)」
トウシ。そう呼ばれた男は、斉藤を無視して僕の前に立ち……。
大声でこういった。
「俺と付き合ってくれ!!」
いきなりすぎる告白。しかも、同性。頭が痛くなってきた……。
何よりこのことがきっかけで、僕の薔薇色人生は音を立てて崩れはじめたのだから‥‥。
「はぃっ!?何を言っているのですか???」
思わず、敬語になる…。そんな自分がむかついた。
殴れ!!そして「変なこと言ってんじゃねぇよ!!この変態!!」ぐらい言ってやっても、悪くはないはずなのに…。
「俺は燈志!!!リンム君やっけ??あんたマヂかわぃすぎるわぁ!!」
こんな愛いっぱいの、言葉を聞かされ……。しかも結構美形なことにきずく…。「いやっ、そんなコト言われても嬉しくないし……。離してほしいですし」
しどろもどろになりながらも、頑張る俺をみてこの男はまた一言……。
「愛してる……。」
「うわぁっ!!!!手ってっ手を離せ!!!!」
「あのぅ〜。」
「アンだ!?ゴラァァ!!」
何だ??このヤンキーみたいなしゃべり方……。
「いっいやぁ、席隣にしてあげるから……。そのっ、席に着いてくれないかい?」
斉藤は、僕を助ける気は・・ゼロに等しいらしくて、僕らの方をむいて話そうとしない……。
「しょうがねぇなぁ…まぁそれなら、許してやるよ。いくぞ、リ・ン・ム☆」
僕の手を引き、席に着く燈志。
「お前も座れよ。」
にこっと笑った笑顔は何とも言えないかっこよさで……。一瞬だけ見惚れしてしまった。