『暖かい雪-3-』-1
「ホントに、昨日はすいませんでした…。」
酒を持って出会って2日の俺の部屋に上がり込み、飲むだけ飲んで寝てしまったという舞子を、俺はあの後宿の女将さんの所まで運んで行った。
他にも宿泊客がいるなかで、俺の部屋に来て酒を一緒に飲んでくれた事に、嬉しいやら、
目の前で寝られるなど男として見られてない事に悲しいやら…
複雑な気分だ。
この宿に来て3日目の、土曜の朝。
「気にしないで。俺も一人で飲むより良かったし、酒もタダにしてくれるって言うんだし。」
「良かった!あたし、なんかぐっすり寝ちゃってスッキリしたんです。水沢さんのおかげです!」
「…良かったね。」
昨日の夜、舞子を女将さんの所まで背負って行ったあと俺は、女将さんから、ある話を聞いた。
「この子は本当に、大変な子なんですよ。」
「はぁ…。」
手のかかる、大変なアルバイトの娘?俺はそう思った。
「…可哀相な子なの。」
「………。」
女将さんは、眠る舞子に布団を掛け直してやりながら言った。
「この子、私の旦那の姪っ子でね。」
「…そうだったんですか。」
道理で苗字が違う訳だ。俺は思った。
あらいけない、この子化粧したままだわ
…女将さんはそう言って、濡れたコットンで舞子の化粧を落としていく。
そうして薄い化粧のベールが剥がれ、見慣れた舞子の顔が現れる。
OLとして働く彼女も、普段はしていない化粧を、毎朝鏡と睨み合いながらしているのだろうか。
素顔になって眠り続ける彼女の、そのほんのり赤く色づいた頬と、19にしては少しあどけない童顔を見つめながら、
どちらかと言えば、俺は化粧をしていない彼女の顔の方が好きだと思った。
「この子…3年前に東京からこっちに越してきてね。」
「そうみたいですね。」
「あら…、聞いたの?この子から?」
「えぇ、まぁ。」
“…東京?あたしも住んでたんですよ、3年前にこっちに越してきたから。”
“そうか、どうして新潟に?”
“んー…聞いたって面白くないですよ。それよりほら、お客さんお風呂には入りました?”