「お母さん…〜春美視点〜」-2
「いや〜まいったね〜」
「あ、大場さんこんにちは」
「あ、春美ちゃんお邪魔してるよ」
家の店の常連さんで隣の市で刑事をやっている大場さんが父と深刻な雰囲気で話をしていた。
後数年で定年なのに、若手並に動くと評判みたい。
「何かあったんですか?」「いや〜榊(さかき)さんとこのお婆さんいるでしょう」
「冬香の?」
冬香の名字は榊なのだ。
「あ、そうそう。うちの市立病院や、ヘルパーさんから通報をうけてね」
「え?」
「病院にも顔出さないで、ヘルパーも断ったらしくて、元気になりましたってお母さまが言ってるらしいんだわ。それはおかしいから調べてほしいってさ」
確かに冬香の今日の雰囲気からも、元気になったとは思えない…
「あそこのお母さま最近様子がおかしくてね。うちの方でちっとした噂があるんだよ」
「どんな?」
「殺しじゃないかってね」「そんな!?」
「あ〜いやいや、もちろん噂だよ?最近多いしね。ただ…介護用品とかが近頃あの家から捨てられてるのが発見されてるんですわ」
「え…」
「夜中にこっそりゴミ捨て場に捨てにいってる娘さんの姿を見た人がいてね」
「冬香が…」
はっきり言って、信じられなかった。
冬香に疑いの目を向けた大場さんにも腹が立った。
「とりあえず今から本人宅に話を聞きにいかなきゃいけんでね。気が重いわ」
「わっ私も行きます!」
「だめだよ。友人なんかがそばにいちゃ益々話を聞けなくなる」
「そばで見るだけでいいです!お願い!」
あまりに私の顔が真剣だったのか、大場さんはう〜んと唸った。
「隠れといてくれよ」
「ありがとう」
「春美…危ない事に首つっこむなよ」
「大丈夫お父さん!冬香は友達だもん」
「すいませんね大場さん。」
「いや、いーですよ。じゃ行きますか?」
「はい!」
私は大場さんに付き添い冬香の自宅への道を歩く…
いいしれぬ不安と、信じてる気持ちが混ざって気持ち悪かった。
「榊さ〜んちょいといいですかね」
大場さんが冬香の家のドアを叩く。
私は向かいにある小さな公園の草むらに息を潜めている事にした。
「どちら様ですか…?」
!?
弱々しい声でドアから顔を出したのは、私が知ってる冬香のお母さんの面影は全く無い姿の人だった…
綺麗だった髪はボサボサで、肌もボロボロ…
確かに最近見ていなかったがこんなにも変わってしまったのか?
「ちょいとお宅の祖母の三千代(みちよ)さん拝見させてもらいますか?」
大場さんは刑事手帳をかざし、強い口調で問い掛ける。