Dream 7月10日-1
7月10日
病室の窓から、空を見上げる一人の少女がいる。
名前は美紀。
もう、日がくれかけている。
薄暗い空を見上げていた美紀は、視線を落とし、町を眺めた。
町には、たくさんの人が行き交っている。
そこから、ゆっくりと視線を上げていくと、海が見える。
美紀は海が大好きで、毎年行っている。
今年も行けるだろう。
ガラガラ
病室のドアが開いた。
よお、と言って入ってきた男の名前は謙。
謙は、美紀のいるベッドの横の椅子に座った。
「な〜にを見てたんすか、美紀さん?」
からかうような、ふざけたような口調で謙は言った。
「空見てたんですよ。夕日で綺麗だったから」
「ふ〜ん。あとは?」
「え?あとって…」
「だから、他にも見てただろ」
「あ、あ〜あと町も見てましたよ。最近、全然行ってないな〜って思って」
「ハハ、そりゃそうだ、入院してんだから」
美紀は黙った。
(は〜、そうだよね、私入院してるんだよね。)
少し俯いた。
そんな美紀を見てか謙は言った。
「まあ、あれだ、心配すんなって」
「え?」
「退院したらどこでも行けんだからさ、まあ、そんときは一緒行こうってことだ」
そう言って、謙は笑った。
(せんぱい)
美紀は嬉しかった。
「あっ、それと」
急に謙が喋り出した。
「海見てただろ」
「え!?なんでわかるんですか?」
「なんとなくね、お前、海好きだしな」
美紀は海を眺めて言った。
「楽しみだな〜」