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“オレ”
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“オレ”第3話-1

『だから、オレは悪くないって!正・当・防・衛っ!』
入学式当日だというのに、生徒指導室から怒鳴り声が聞こえる。
叫んでいるのは女子生徒で短い髪、男のような口調。−奏だ。
朝の一件で入学式の後に呼び出されたのだ。
『だからって完膚無きまでやることは無いだろう?ましてや君は女・・』
『んな事ぁ関係ねー!オレにケンカ売ったのが悪いんだよ!』
こんな口論が延々と続き、小一時間後。
何故か仲良さそうに笑いあいながら出てきた。


『悪いな。茉理。あの先生以外とイイ人でさ、お互いの武勇伝話してたら盛り上がっちゃって!』
茉理が、微笑みながら傍らで話を聞いていた。
『いいの、私も部活を見て回ってたから。』
『おー、そっか。何に入るつもりなんだ?』
と、和やかな会話を中断せざるを得なくなった。目の前に一人の男子生徒が立ちふさがったからだ。
『朝は、世話になったな。』
朝、奏に敗けた生徒だ。
『なんだよ?またやろうっての?』
既に戦闘モードの奏。どこから取り出したか、格闘用のグローブを手にはめている。
『いや・・違う。』
低い声で呟いたかと思えば、いきなり頭を下げる。
『俺は、あんたに惚れた!姐さんと呼ばせてくれ!』一瞬、ぽかんとしてしまう二人。
『いや、あんた高校生だろ。それで姐さんって・・なぁ。』
『いいんです、あの暴れっぷり!久しぶりに心躍りました!貴方みたいな人は、藤宮の姐さん以来だ!』
その名前に、奏は息を呑む。
『藤宮・・って、藤宮霧沙(ふじみやきさ)か!?』『お知り合いで?』
『あの人には小さい頃から世話になってたからな!この学校にいるのか。』
一人、話に付いていけない茉理が奏の袖を引っ張る。『奏ちゃん、誰なのその人は?』
『オレが尊敬する人の一人だよ!』
話が盛り上がっているところで、ふと気付いた。
『ちょっと待てよ、あんた霧沙姉の舎弟だろ?俺に付いたらヤバいんじゃないのか?』
『その事なんですが、今から姐さんに挨拶しに行こうと思ってるんです。』
それを聞き、滅多に興奮しない奏が目を輝かせる。
『マジかよ!?ならすぐに行こうぜ、えーっと・・』『自分のことは豪(ごう)と呼んでください。』
『分かった。行こうぜ、豪。』
かくして、舎弟を持った奏は憧れのお姉さま(?)の元へと向かうのであった。


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