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“オレ”
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“オレ”第2話-1

『奏ちゃーん!』
後ろから呼び止められる。聞き慣れた声の方向へと振り向く。
『よっ、茉莉(まつり)。。』
長い髪を後ろで束ねている女生徒、沖野(おきの)茉莉。奏を“ちゃん”付けで呼ぶことのできる数少ない人物の一人だ。
『奏ちゃん、やっぱり制服姿も似合います!格好いいです!』
良く思っていなかった奏だが誉められることに悪い気はしない。
『そうか?まぁ茉莉が言うんだから間違いないだろうけどな。』
照れ笑いを浮かべて、笑いあう。


小高い丘の上に建つ私立石動(いするぎ)学園。その校舎の四階の一室から双眼鏡で学校へと続く坂道を眺める一人の男子生徒。
『今年も・・またぞろぞろと来るねぇ、可愛らしい新入生が。』
にやけながら一人ごちる。『またやってるのか。』
そこへ静かな声と共にもう一人男子生徒がやってくる。
『おう、蓮。お前もどうだ?目の保養。』
『遠慮する。それよりも、お前には入学式のリハーサルがあるだろう。』
窓際の生徒が携帯を見て慌てて出ていく。
『やべっ、じゃあまた後でなー!』


場所は変わって校舎の三階。ここにも坂道を眺める
−今度は女子生徒がいた。その周りには数名の女子生徒がいて。外を眺める生徒を取り巻いている。
『棗さま。そろそろ参りませんと、式に遅れてしまいます。』
その中の一人が落ち着いた調子で告げる。
『今、行くわ。それよりも・・。』
棗と呼ばれた生徒の目線は、ある一人の女生徒に注がれていた。短い髪、スカートから見えるスパッツ。
−奏だ。
〈・・私好みの子。どうにかして近付きたいわ。〉
と、不敵な笑みを浮かべていた。



悪寒に似た感覚に立ち止まる奏。
『奏ちゃん?』
『あ、いや何でもない。行こう。』
〈前にも、あったな。〉
嫌な事を思い出し、思わず顔が険しくなる。

・・その時。
『おい、そこの女っ!』
突然、怒鳴り声が響く。
『俺にガンつけるなんざ中坊のくせに生意気じゃねーか!』
どうやら、奏が睨んだと思っているらしい。男が大股で近付いてきて襟を掴む。傍らにいた茉理が息を呑む。
『いきなりこれかよ?
随分と苛立ってんだな。』『奏ちゃんっ!?』
皮肉げに、そして少し楽しそうに笑う奏。茉理は知っているのだ。奏にケンカを売り、こういう風に笑いかけたられ相手の末路を。
『茉理・・先、行ってろ。すぐに追い付く。』
奏が自分のカバンを投げ渡し目配せする。
しばらく躊躇していたが、その場から走り去る茉理。

−3分後、男の断末魔が響く。奏は、中学デビュー戦をKO勝ちで飾ったのだった。(決め技、ボディへの体重の乗った右ストレート。)


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