パレット 『夏でも小春日和』-3
―うおーい。あきらぁー?
ん?なぁに、アキ
アキ?
恐る恐る 瞼を開ける
「アキ。」
「起きたか。気分はどうだ?任明堂に聞いたら此処にいるって言ってたから」
やだ。一番会いたかった人が目の前にいるよ。
カステラ屋め。
やっぱ 親友なんだな。
昌仁が乱れた掛け布団をそっと直してくれた。
「晶。お前何か悩み事があるんなら俺に相談してくれよ。大して役に立てねぇかもしれないけど、俺ら親友だろ?俺だって‥‥お前の役に立ちたくているんだからな‥‥一人で抱え込むな」
え?
途中よく聞こえなかったけど。嬉しい事言ってくれた気がする。
可能性に賭けるぜ、俺?「…アキ、昨日お前さ。帰りに女の人といたよな。あれは――」
掛け布団で顔を半分隠すという女子みたいな事をして、恐々聞いてみる。女の人の気持ちが解る気がするよ俺。
お願いだから。
誤解だと言ってくれ!
ああ。沈黙が長すぎる!!
「お前見てたのか。。あれはな」
あれは‥?
予想だにしない答えが返ってきた。
「留学してた薊(アザミ)だよ。久しぶりに帰ってきたんだ」
薊…ちゃん?
昌仁の妹さんで高校生で留学してた?あの薊ちゃん。
あ、ああ。そっか。うん、そうか。
「薊がどうかしたか?」動揺しないように、何も無かったかのように接しよう。
「薊ちゃんかぁ。いや〜み、見ないうちに大きくなったね!あはは、ははは」
明らかに不自然すぎたかな。
でもよく考えてみればあれは確かに薊ちゃんだった。昔とはかなり容姿が違ったけど、面影というものが残っていた。
俺がテンパっていたことが今になってやっと判った。馬鹿だなぁ。俺
「ああ、随分と変わっちまって最初俺も気付かなかったんだ。そしたら『お兄ちゃん失格』なんて彼奴に言われたよ」
へへへ なんて笑って。嬉しそうだな。昌仁。
いやーでも良かった。
完全に誤解する前で。
本当に
安心したら睡魔が襲ってきた。
暗闇に吸い込まれる。
あれ?
またこれ?
色だ。いっぱいの色。
終わったと思ってたのに。今度は頭がおかしくなるくらいの膨大な量の色が頭に流れ込んでくる。
う、わぁ
頭が、割れそう
あ!黒いシャープな線で描かれた昌仁だ
あ、ああ
またあのパターン
無色が侵食してきた
消える
消える
黒と白で描かれた昌仁が消える――――
昌仁っ!!!!!
行かなくちゃ
助けなくちゃ
昌仁
手を伸ばして
次は俺なのに
―――――――――