パレット 『初恋を貴方に』-1
『無色』って何だろう。
なんだか俺、怖いんだよ。毎日少しずつその『無色』に侵食されていってるようで。正体も解らない『無色』に。
どうしてかな。ただの思い過しとかなのに、凄く気になるんだ
ねぇ―――どうしてかな。
「あぁ?んな難しい事、俺に解るわけねぇだろ」青い空。雲一つないとても理想的な空。その下で二人の高校男児は授業を微妙にサボりつつ、屋上で楽しげに(?)談話していた。
「えー、何で解んないんだよ。お前には解らない事なんかないと俺は確信してたのに」
俺の名前は川瀬 晶(カワセアキラ)。高校二年生の健全な男児。
今は俺の疑問をいつもの様に、親友の如月 昌仁(キサラギアキヒト)クンにぶつけているところだ。ちなみに俺は昌仁の事をアキと呼んでいる。
昌仁とはもう小学校からの付き合いで幼なじみだ。昌仁は一番心を開ける昔から俺の唯一の理解者で、共感者だった。
しかし今の昌仁は、何度目か解らない同じ内容の俺の疑問に呆れ返った様子だった。
いつも最初の方は乗り気なくせに。最後まで聞いてくれない。
「お前の目に俺は、そんな完璧人間に見えるのか?だとしたらお前ってヤバいだろ…」
それはどういう意味だろう。鈍感な俺にはちんぷんかんぷんだった。
「だけどさ、毎回言うようかもしれないけど。少しは真面目に俺の話に耳を傾けても――――」
きぃーんこぉーんかぁぁーんこぅおぉーん
最悪なタイミングでチャイムが古い校舎に響いた。
空気読めよ。
昌仁はひとりでに立ち上がると屋上の出口へ向かった。俺は呆然とその一部始終を見つめていた。
あれ?昌仁が視界から消えた。首を上下左右に動かし昌仁を探す。心搏数急上昇。昌仁、昌仁?
コツン
「行かねーと置いてくぞ?」
良かった。見つけたけど
いつの間に我が裏に?
額を軽く弾かれた。昌仁が上から俺の顔を覗き込んでくる。
昌仁の後ろに広がる青い空。空がこんなに眩しいと思ったのはいつが最後だったか。いろんな色が溢れていた。
俺は先に行ってしまった昌仁を追い掛ける為に根を伸ばした尻を上げた。
今日こそ真面目に聞いてもらおうと思った俺が馬鹿だったのか。
はぁ。溜め息が深い。
日がすっかり長くなりこんな帰宅時間になっても空は全然青いままだった。
太陽も衰えを知らない。ぽかぽか陽気も最近ではじりじりとした夏を感じさせる熱さを含みはじめた。
俺らは学校から家が近い為自転車登校している。
だけど昌仁と帰る道はなんかいつも寂しげで、実を言えば俺は一番この時間が苦手だ。昌仁は気付いてないようだけど俺が一日の中で一番無口になる空気が漂って、息もまともに出来ない。苦しい……
昌仁と別れる曲がり角。
俺はこの時に無性に涙が出そうになる。どうにか抑えるのが精一杯で、むくれた感じの顔を昌仁は
「なんだ怒ってんのか?考えてくるから機嫌直せよ、な?」
なんて軽く言う。言って、頭を何度か撫でる。嘘だ。何度そう言われて放ったらかしにされたことか。もう、誤魔化されない。
それに、別にそんなんじゃない。