放課後の背徳準備室-2
放課後、ドアの向こうには早戸先生ひとりきり。
この瞬間を待っていた。
もう怖いものはない。
先生が私を知っている確率は低い。だって、可も不可もない普通に地味な生徒だったもの…。
大丈夫。
伊吹は柔らかく微笑みながら2回ノックした。
返事を待たずに中に入る。後ろ手でこっそりロックして。
相変わらず清潔で薬品臭く、ガラス製品がゴロゴロとシンクやら机上やらで所狭しと占領している化学準備室。
一歩踏み出すのさえ神経質になるほど。
日に焼けたカーテンがかかる窓向きの机で、書き物の手を止めた早戸が気怠げに伸びをする。
「…誰?」
気配に尋ねる。
「1年の伊吹です。先生、お願いがあって来ました」
早戸の後ろ頭ににっこり安心しながら、伊吹は素早くスカートのホックとファスナーを左手で下ろす。
右手はブラウスとベストのボタンを器用に外して…。
床に落ちた制服の衣擦れ音が、早戸の鼓膜を、室内の空気をかすかに震わした。
訝しげに振り向く。
「き、君は…一体…」
絶句で瞠る早戸。
伊吹の白く柔らかな裸体が目の前にあったから…。
「先生、見てください」
冷たいタイル張りの床にさえも動じず、伊吹は仰向いて脚をそっとM字に開く。
笑顔のままで。
夢見るように。
…呟く。
「先生…好き…」
「…ばっ、馬鹿なことは…やめ…ろ…っ…」
叱るその声はやがて、尻すぼまりに終わった。
戸惑いつつも、早戸は伊吹の肢体から目が逸らせない。
相手は女生徒。
それなのに、それなのに。
凝視してはいけないと思いつつも…。
透けるように白い肌、淡く色づく乳輪と乳首、柔らかな黒い茂み。
その奥で息衝く一条の光。
(……綺麗だ…)
ごくん…、喉仏が1回、大きく波打った。やがて息が荒くなるのが自分でもわかる。
女体を見るのは初めてではない。
しかし、視神経に飛び込んできた衝撃は大きく、早戸の心底までも揺るがした。
唾がわき、口内が湿って溢れる。
「先生…見て…」
早戸のもろい内面を付け込むように伊吹は囁く。
濡れて滑りやすくなった秘花を左右に広げながら。
細く長い両指が茂みを潜り、肉芽の皮が剥け、秘唇を押し分けて…
ゆっくりと丁寧に、丁寧に。
薔薇色の大輪が、早戸に向かって咲き誇った――…。
「…じ、自分が、何を…して…るのか…わかっ…て…るの…か?…」
汗が噴き始める。
心臓がうるさいほど轟く。
呼吸が上手くできない。
吐いて吸って、…そんな簡単な手順すら忘れてしまった。
いつしか息を止めている自分に気づく。
伊吹から離せない目がだんだんと乾き、痛みで染み始める。
しかし、瞬きさえも惜しい。
「ん、わかってるよ。先生に彼女がいるってことも…」
諦めたように微笑む伊吹。
「でもね、あたしにも彼氏がいるの」
嘘だけど。
「でもね、先生が好きなの」
こればかりは譲れない。
「全部全部わかってるから…」
先生、優しすぎるもんね。
「これは内緒。…ねえ」
私を突き放す理性があるなら、今のうち、今すぐ…。