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その心、誰知らず。
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その心、誰知らず。-4

「止めるんだ由敬っ、もういい…」

「父さん」
『お父さま』
「二人ともすまなかった。全て私の責任だ。二人の気持ちを解ってやれずに、申し訳なかった」
泉明寺敬世の土下座など、恐らくこの世で誰も見たことなどないだろう。
それが、今こうして子供の為にしている。
これには由敬も、伽世の言葉を受け入れるしかなかった。
そして、伽世は。
『二人とも、これからは仲良くしてくださいね』
「また逝ってしまうのかい?」
『ええ。ごめんね、お父さま、兄さん。それと、ありがとう。私にそっくりな娘……』
すっ、と伽世が少女から抜けていった。
少女はその場にへたり込む。
「伽世?」
「大丈夫。伽世さんはちゃんと逝けたみたいです」
「そうか。良かった…」
「君は何者なんだ?」
「あたしは……」

「お話し中のところすみませーん!」

三人が一斉に庭に視線を移した。
そこには、何時の間にいたのか、サングラスを架けた若い男がいた。更に陽気な声で続ける。
「オレその娘の保護者なんですけど、彼女引き取りに来ました」
「父さん…?」
由敬は父を見るが、敬世は首を横に振る。
「自己紹介が遅れましたが、私、黄泉野という者です。僭越ながら、人生相談なぞやっております」





「依頼は伽世さんから?」
「そ。内容は“兄の父に対する誤解を解いてほしい”」
「このような結果になってもか?」
朝刊の一面を突き出す。
見出しには“大企業会長、社長、共に辞任!新たな再スタートは?!”とある。
「誤解は解けたんだ。それ以外の保障はこちらには無い」
「私が死にかけてもか?」
「………結果オーライ。ってことで」
「今の間はなんだ」
「それにしても、いつ気付いたんだ?」
ばれないように憑依させてたのに、と至極残念そうに言う。
「あの父親、敬世さんに『伽世』と呼ばれてからね。初めに呼ばれて反応したのは私じゃなかった」
それに、『伽世』と呼ばれるようになってから、頻繁に伽世の記憶が流れ込んできたのだ。
あの時、伽世が出てこなくても自分が話をしていただろうと思った。





少女が、迎えにきたという男に連れていかれる前、男は敬世に名刺を渡し、更に耳元で囁いた。

「ご依頼があればこちらに。但し、条件は依頼人が亡くなっていることですが」


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