【魅惑のお客サマ。-2-】-4
「俺、明日から学校なんだ」
にっこりとした笑みを浮かべると、顔を真っ赤にして悶える私を跨いでアヤトは部屋を出ていった。
清々しい顔で、悪びれた様子もなく。
「あの後…私…」
アヤトの顔が徐々に近付いてくるところで、緊張が最骨頂に達した私は…
(覚えてない…?)
もしかして、もしかして…
「可愛かったよ、ヒヨコ」
「ぎゃっ!」
いつ戻ってきたのか、アヤトがドアを開けて腕を組んで見ている。
口元を意地悪く上げながら。
「可愛かった…って?」
「さーあね」
意味深な言葉を残して、再び部屋の外へと消えていった。
(チュー…したの?)
サーッと血の気が引いていくのが分かる。
『可愛かったよ』
あの言い方…まさか、まさか…!!
「いやあぁぁぁぁ…」
次にどんな顔してアヤトに会おう?
(てか、会いたくない…)
人生初のチューを覚えていないなんて…
「チューしたの?」とも聞けるわけもなく、一人で悶々と、後悔と羞恥心でうなだれるのであった。
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