《本当は君が…》-1
「もう、あれから一年経つのか…」
俺はスーツに身を包み大学の入学式にいた。一年前…丁度桜が咲いた頃、俺の大切な人は俺の前から消えた…
《本当は君が…》
「原君!私と付き合って下さい!」
高校2年の春だった。俺(原 正則)は同じクラスの中島 由樹と言う女子に告白された。断る理由が無かったので付き合う事にした。
周りの奴等からは羨ましがられたりする。男子の間で中島 由樹は人気があったらしい。しかし俺は、付き合うとかあんまり興味がないし、すぐ別れるだろうと思っていた。
「正則!!一緒に学校帰ろう!」
中島 由樹が誘ってきた。それは付き合い出して数日後の事だった。
「べつに、いいけど…」
素っ気なく返事をして今、俺は中島 由樹と坂道を下っている
「ねぇ?正則!…私ね!正則の事、大好きだよ!!」
「…うん…」
自分の思っている事をハッキリ言ってくる中島 由樹に俺は訳がわからない
「…あのさ、中島さんさぁ。俺と付き合う理由がわからないんだけど…俺と付き合っても楽しい事ないよ」
「「………………」」
一瞬、周りの空気が固まる。しかし中島 由樹はいきなり笑い出した
「なんで、笑うんだよ…」 「さっきも言ったよ?私、正則が大好きなの!」
ますます訳がわからない…はっきり言ってしまおう!、そう考えた俺は中島を見て口を開く
「俺、大好きとか言われても、中島の事大好きじゃないから!」
言ってやった!…俺と仲がいい奴等の彼女達は、こう言われれば泣くだけで何も言わなくなる
「……ッ……」
ほらきた!俺はそう思っていた。しかし中島は…
「なぁ〜んだ!大好きではないんだぁ………だったら今は〔好き?〕までかぁ!…まだまだ先は長いから正則が私を大好きになるまで頑張るね!」
「………はぁぁ…」
俺は中島に聞いた事を後悔した。それを気にせず、由樹は俺を呼ぶ
「あの桜、きれーだね!」
坂道の下の桜が丁度咲いていて、それに向かって中島は走って行く。俺は後を追いかける。
(中島、足速い…)息を切らし下を向いていた俺を中島は覗き込む
「ハァハァ……何?」
「ちゅッ…」
中島は軽くキスをしてきた。俺は、と言うと顔が赤くなり頭から湯気が見えそうになっている
「正則ィ?…私ね!正則が私の事大好きになってくれた時、2人でどこかにお花見行きたいな!…あと今度から私の事、中島さん、じゃなく由樹って呼んでよね!」
俺はそれどころではなく、うん。と言ってしまった
それから彼女を家まで送り俺は空を見上げる。彼女の言う通り、俺と彼女はまだまだ先は長そうだ………俺はそう思っていた