n.r〜SIDE 慶〜-1
「キャーっ!!慶君よっ」
「悠君もいるーっ!!」
俺は桐谷慶(きりたにけい)。自慢じゃないが女には不自由をしたことがない。
この容姿が他人受けするみたいだ。
毎日のように女からの黄色い声援が聞こえてくる。
そんな女に軽く手を振ると
「キャ〜まじかっこいいッ」
とまぁこうなる。
ちょっと優しくすれば女はいいわけだ。
「よくあんな知らない女相手できるな」
親友の悠は呆れたように言う。
「悠には絢ちゃんがいるもんなっ」
からかうように言うと悠は顔を真っ赤にして照れている。
いろいろあったみたいだけどなんだかんだで二人はラブラブだ。
こんな悠が正直羨ましい…
俺にはできない。そんな風に素直にはなれないから。
そしてこんないらつきを治めるように毎日女を抱く。
「っあん…慶くん…好きっ」
「…。俺もだよ」
心にもないことを言いながら微笑う。
腰のピッチを早め、乳房を揉む。結合部からはすごい粘着音がしている。
女は限界なのか足をガクガクと震わし、俺に腕を絡める。
「ぁあんっっ、イく…あぁぁ!!」
「っう…」
腹部に欲望を吐き出した。
「すごく良かったよっ」
「あぁ。またな」
俺は同じ女とは二度とヤらない。何度も交わると後々厄介だからだ。
「しかし最低男だね、君は」
「悠だって好きでもない女と寝たと思うけど?」
負けずに反撃してやった。
「咲季ちゃんと別れる前はそんなんじゃなかっただろ」
「うるせえな。その名前は出すな」
悠は舌打ちをしながら素直じゃねえ、と言い残し去っていった。
俺だって素直になれるものならなっているさ。
それが無理なんだから仕方ないだろ?
あいつが俺のことをなんとも思ってないから。
寧ろ嫌われてるんだから…
咲季というのは俺の元彼女で、俺が振られた相手。
きっと俺の人生最初で最後…
俺と咲季の出会いは約一年前…高校の入学式だった。
俺が悠と話ながら教室に向かって階段を昇っているときだった。