n.r〜SIDE 慶〜-4
「…ひっく、ふぇ」
体が言うことを利かないのか動かないまま、泣いている。
俺…まじで最低だ。怒りに任せて咲季を…
「咲季…ごめ…ん」
なにも言わず身仕度をし部屋を出ていった。
あれから何日か経った。
たまに咲季とは顔を合わすが俺を見ようともしない。
俺がしたことは本当に最低だから…あたりまえだよな。
でも辛い。咲季と話もできないなんて。
「慶…咲季ちゃんと別れたんだって?」
悠が尋ねてきた。
「まあ…な」
俺たちが別れたのはもう学校中でも有名だった。
ただ別れたことを認めたくない自分がいた。
そして煩わしいことがある。女が気安く話掛けて来ることだ。
「慶君っ今日私の家おいでよ」
馴々しい…こういう女大嫌い。
「家ねえ…考えとくわ」
曖昧な答えをして逃れた。
今はそんなことをしている場合じゃない。
咲季に謝らなきゃいけないんだ。
許してもらえなくても話ができるように…
「おい、咲…」
えっ…?
誰だよあいつ…
咲季が笑っている。
ついこの間まで俺のものだった笑顔が違う男へと向いている。
俺と居る時より楽しそうだな。
あの太陽みたいな笑顔。また俺に向けてほしい。
でも何か俺が言うともっと咲季は傷つくかもしれない。
もう…なにも言わないのが咲季の為だな。
俺は関係を絶つことを選んだ。
「加奈ちゃん?家行かせて貰うよ」
「本当に?やったあっ超嬉しい」
俺はモテるんだから…
他にも女はたくさんいるさ。
そうして俺は最低男へと呼ばれるようになっていった。
毎日他の女を咲季と重ねて抱く。
淫らな甘い声や透き通った白い肌、細い肩…
俺を求めて愛を囁いて欲しい。
俺で支配をしたい。
俺しかいなくなるように壊したい。
咲季の全てが欲しい。
そんな願望を消すように…