n.r〜SIDE 慶〜-2
ドンッ!!
「…痛ってえっ」
「ごめんなさい〜」
いきなり俺の上に女が落ちてきた。
「ってぇな!!なにすんだよ?」
「謝ったじゃない。そんなに怒らなくても…」
俺は腹が立って、その女を無視して歩きだした。
「…悠、もう行こうぜ」
「ああ」
教室に着くとさっきの女がいた。
「「あ〜っ!!」」
二人同時にことばを発していた。
このとき俺は咲季を鈍臭くて、口煩いという印象しかなかった。
でも話してみると趣味が合って、気が付くとずっと話していた。
そして俺が咲季に特別な感情を抱くのに時間はかからなかった。
話してみるとどんどん咲季が解ってくる。鈍臭いところがあるけど、自分の思ったことは必ず言う。強情なところもあった。
でもすごく素直で笑顔が人懐っこい。
女を初めて愛しいと想った。
俺は今までこの容姿のおかげでか、色んな女と付き合ってきた。
とびきり美人もいたし、なにもかも完璧な子もいた。
でも誰にも本気にはならなかった。
「なあ、咲季」
「なあに?」
咲季は、ん?という風に首を傾げる。
「俺…咲季のこと好きなんだけど…付き合ってくれませんか?」
咲季は顔を真っ赤にして静かに頷いた。
俺も実はすごく恥ずかしかった。
人生で初めて自分から告白をした。
そして俺らは付き合うことになった。
咲季は今まであんまり恋愛経験が無いらしく、二人で登下校するだけでも照れまくっていた。
「一緒に下校とか今までと変わんねえじゃん」
「でも…恥ずかしいの」
ずっとこんな風にいれると思っていた。
ずっと咲季が傍にいてくれると…
だけどある日、
「慶君。ごめんなさい、私たち別れよう」
咲季から突然別れを告げられた。
今も詳しい理由はわからない。何度聞いても悲しげな顔をして首を横に振るだけで。
「どうして急に…」
「ほんとに…ごめんね」
俺は怒りと悲しみのあまり咲季を押し倒し怒鳴っていた。
「なんでなんだよ?理由をちゃんと言えよ」
黙りこくってなにも言わない。
俺はこんなにお前を愛しているのに…
俺は腕を押さえ付けて唇を貪った。
初めての口付けをこんな形でしたくはなかった。
本当は咲季がしても良いってまで待つつもりだったのに…