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COMPLEX
【コメディ 恋愛小説】

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COMPLEX -act.1--1

あなたに話しかけられるだけの勇気が欲しい。───── by 佐伯実那



今日から新学期。
あたしは体育館前に貼られたクラス替え表の前にいた。
ダメだ……見えない。
あたしの前には10人ほどの生徒がいるため、彼らが壁になってクラス替え表が見えないのだ。
あぁ、後10センチ……いや、後5センチ背が高かったら!

佐伯実那、高校2年生。
身長145センチメートル。
体重50キログラム。

憎い。自分の体型が、神様が、憎い!

自分を呪うこと約5分、クラス替え表に群がる生徒たちは増える一方で、依然として、あたしはクラス替えを確認することができていなかった。
必死で背伸びして首を伸ばしたり、飛んだり跳ねたりしているのに、平均身長の壁は厚い……じゃなくて、高い。
「んんー……わっ!?」
ローファーの爪先で精一杯背伸びしたあたしは、バランスを崩して前方につんのめりそうになる。
が、その体は、前にいる男子生徒にぶつかる寸前で後ろから支えられた。
「あぶな……」
あたしのお腹と左肩を支えてくれた人の声が後ろから聞こえて、あたしの心臓が飛び出しそうに脈打ち出す。
近い、近いよ、声が。
しかも、この声は絶対……。
「大丈夫?」
聞き間違うことのない低い声。
あたしの大好きな人───麻生創(アソウ・ハジメ)くんの。
顔が熱いよう。
心臓が爆発しちゃいそう。
「佐伯?」
麻生くんがあたしの名前を……っっ!!
あたしの意識はそこで途絶えた。

目を開けると、ぼやけた視界に真っ白い天井。
右を見るとクリーム色のカーテン。
左を見ると、
「みーな!気ぃついた!?」
大きな声がキィーンと頭に響いて、いっきに意識がはっきりする。
あぁ、ここ、保健室か……。
「大丈夫?」
ベッドに横たわるあたしの傍らにいるのは、親友の高崎鈴花(タカサキ・スズカ)ちゃん。背が高くてスタイルのいい、ちょっと目がきつめな美人さん。あたしと正反対で面倒見がよくて頼りになる。
「うん、へーき……」
そう言って体を起こす。
「そ。全く、気ぃつけなよね。倒れるなんて、どうしたのよ?」
そっか、あたし、クラス替え表見に行って、背伸びしたら転びそうになって、それから……。
「で?麻生と何かあった?」
「!?」
顔がカーッと熱くなる。
何で?何で知ってるの?
「あー、赤くなってるー」
鈴ちゃんにからかわれて、あたしは更に赤くなる。
「ななななな、何でっ!?」
うあー、言語中枢が壊れていく。
「だぁって、あんたをココに運んできたの、麻生だって言うじゃない」
「はっ?えっ?ホントに!?」
運んだって、運んだって、まさか……。


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