餓島の防人-3
「万歳!万歳!万歳!」
俺は一番先頭にいた米兵に向け突撃した。既に御互いの距離は数メートルまで縮まっていたので敵は発砲する間もない。銃剣は脇腹に刺さっているが刺さった銃剣を抜く力は今の左手ではない。それでも一生懸命抜こうとしている時、後頭部に激痛が走って前のめりに倒れた。最期に見たのは、米兵の軍靴のつま先だった。
再び、目が覚めた。
ぼんやりと真っ白い天井が見える。耳には聞きなれない言葉。
『ここは何処なのだろうか。』
俺は考える。
頭が痛い。
そうだ。さっき小川でだとしたらここは。
辺りを見回す。ぼんやりしているが病院だとなんとかわかった。
そうか、死ななかったのか。
俺は、眠たくなり再び意識を失った。
「軍曹!軍曹!軍曹!」
懐かしい声で目が覚めた。今度はハッキリ見える。声のする方を見るとなんと川島だった。
「軍曹、気がつきましたか。お互いに生きてます。実は、戦争は一月も前に終わってたんです」
「勝ったのか!!?」
「いぇ、負けました」
「そうか…」
「軍曹殿はこれからどうしますか?」
こうして、俺の戦争は終わった。ガダルカナル島最期の日本兵が連合軍に投降したのは昭和27年のことである。
もしかしたら、未だに南方のジャングルで日本の援軍が来るのを待っているかもしれない。最期の勝利を確信し、皇軍が再び現れるその日まで…
完