餓島の防人-2
「川島の奴が今度、小川に来たときに我が新居を自慢してやるか」
思わず頬にエクボが出来た。
軽い発砲音とともに先頭の兵が後ろにのけぞる。俺はすかさずボルトを後退、空になった薬莢が斜め右後方に飛び、俺はボルトを前進させ再装填、狙いを定めた。
タァッッン
二人目の男も倒れる。ここに至って敵も発射点を把握したのか発砲するも慌てて撃っているため弾道が高い。さらに数人が倒れた二人を助けようと一ヶ所に固まったのを俺は見逃さなかった。
すぐさま九七式手榴弾を取り出すとピンを抜き起爆筒を鉄兜で叩き投げた。
シュ〜
排煙の音と白煙を引いて飛んで行く。
「1234」
ダァァン!!!!
キッカリ5秒で爆発した手榴弾は先の二人を助けようとした米兵二人を薙ぎ倒した。
「よし。敵は小隊規模だ。イケる」
俺は再び小銃を構え射撃姿勢をとり射撃!しかし、米兵も段々と落ち着きを取り戻し狙いが正確になってきた。急いで伏射に切り替えたがここでは位置がバレてしまえば余りに遮蔽物がない。
俺は5発目を撃ち終えると生き残りの米兵の一部が装填している間隙をついて木の所まで躍進した。ここはもう小川の目の前で双方は20メートル程の距離しかない。つまりは此方が装填する合間に突撃され白兵戦になるだろう。
俺は弾がなくなったことを悟られない用に演技しつつ5発の弾を装填することに成功した。
再び俺は敵に向かって発砲。しかしもはや体制を立て直した米兵は火力で俺を圧倒した。奇襲ならいざしらぐ遠戦では圧倒的に不利だ。だが逃げようにも場所はない。
木にはピシッピシッと弾が当る音がなり木の破片が裏側まで飛び散ってくる。これでは反撃を加えようにも加えれない。男、内山正剛。武運これまでか。かくなる上は日本軍人としてその本懐を遂げるまで!
俺は弾丸を装填し木の陰より立ち上がった。
「大日本帝国陸軍万歳!!」
俺は敵の弾幕に身をさらし発砲した。
その時だ。
ズジュシン
左肩に強い衝撃を受けた。そのまま後ろに転ぶようにして倒れた。急いで木のとこまで行き左肩を見る。
左肩は紅の血に染まり軍服が血でジットリと体に張り付いていた。
「△※○☆◇!!」
敵の射撃がやみ辺りに静寂が戻る。俺の左手は傷の為か力が入らない。銃を構えれても射撃の衝撃には耐えられそうにない。困った。勇敢に死ぬつもりが、かくなる上は自決か。いや、まて。自決しては意味がない。少しでも敵に損害を与えたほうが御国のためになるのではないか。
どうだ。どうする。
ふと見れば、米兵数人が着剣し小川を渡ってくる。
よし、イケる。銃を撃つことは出来ないが突くくらいならなんとかなる。よし!
俺は再び小銃を構え木の陰より飛び出した。