シスコン『第七章』-6
秋冬は部屋にある写真立てを見た。
いつだっただろうか。夏休みに家族で行った旅行の時の写真。
写真の中で春夏は、秋冬の頬にキスをしている。秋冬は笑っている。
小学生の時だったかなと、秋冬は幼い自分を見て思った。
秋冬は自分の頬に触れた。
写真の中でキスされている左頬。もう覚えてはいないが、写真は確かに写している。
自分の気持ちに正直だった頃の自分を。
「…なんで変わっちまったかな。」
それはきっと、罪の意識。
姉を好きになってしまった自分の罪に気付いたから、姉との距離を無理にとろうとした。
結局、想いは膨れ上がったわけだが。
「…馬鹿姉貴。」
秋冬はパタリと写真立てを倒した。机に置いてあった漫画を取ってベッドに座る。
「……あぁもうっ。」
秋冬は漫画を投げて、頭をかきむしった。
「何が才能だよ…。」
秋冬はベッドを殴った。布団に殴った跡が残った。
翌日
秋冬は下駄箱で靴を履き替え、階段を上がる。
階段の途中の踊り場に、人が集まっている。そこには、掲示板があったはずだが、人がいて見えない。
その人の山の中に、千里を見つけた。
「千里、どうしたんだ?」
千里は振り向いた。秋冬を見て、慌てた。
「秋冬く……見ちゃダメ!!!」
千里が秋冬の目を掲示板から離そうとする。
一瞬、人の隙間から掲示板が見えた。
そこには、一枚の大きい紙があり、文字が書かれていた。
『四世秋冬は』
秋冬は自分の名前が書いてあった事に驚き、文字を追う。
『姉の四世春夏を女性として愛している』
秋冬に衝撃が走った。千里は秋冬の体に抱き付いている。
「ちょ…これなんだよ……!!どけ!!!」
澄がそこにきて、人をどけて通り、紙をでたらめにはがす。
千里は優魅の姿に気付いた。優魅は抜け殻のようになっている。
「浜崎さん……。」
澄は、はがした紙を持つ。
「四世弟!!これはいったい……オイ四世!!!」
秋冬は首を振る。だが、秋冬は確信していた。
白鳥だ。
自分が春夏の事を好きだという事を知っているのは、澄と、白鳥だ。
「…四世……、」
掲示板に群がっていた人達が秋冬に気付く。
「…千里、離してくれるか。」
千里は秋冬を離した。千里は優魅に駆け寄る。
「…作山、悪い。気ぃ、使わせちまって。」
「いや、んな事はどうでもいい。それよりもこれは……!!!」
「わかってる。見せてくれ。」
秋冬は作山から何枚にも破れた紙の中から一枚を受け取る。
「…こんな形で、姉貴にバレるのか?」
「四世…、誰がやったのか、検討ついてんだな…?」
「あぁ、なんとなくな。」
秋冬はグシャッと、紙を潰した。
「なぁ……?」
秋冬は後ろの、階段の下のほうを見た。
「白鳥……?」
そこには、白鳥が奇妙な笑みを浮かべて、秋冬を見上げていた。
「どうかしたのかな?四世秋冬君?」
秋冬は微笑む。
「何でもねぇよ。それよりもお前、オレを敵に回して後悔すんなよ?」
白鳥は階段を上がり、秋冬に近付く。
そして、秋冬にしか聞こえないほどの小さな声で言った。
「させてみな。」
白鳥は教室へ向かった。秋冬は澄を見る。
「行こうぜ。」
秋冬は階段を上がる。澄は秋冬についていく。
その途中で、優魅を心配する千里を見つけた。