ワスレモノ-8
「それを受け取った瞬間に積み上げてきたものが崩れ去るとしたら‥‥‥‥どうする?」
彼の質問の意図が読めない。一体、どんな答えを求めているのだろう‥‥‥。
でも答えは一つ。
「私ならすぐにでも手に入れる。周りのことや後先を考えて、躊躇ってしまうようなものだとしたら、本物じゃないかもしれないし‥‥‥。まぁ、そうは言っても気にしちゃうのが人ってモノなんだろうけどさ‥。あんまり私の意見は参考にならないね‥。」
そう言って彼を見たら、驚いているような‥でも真剣な眼差しで私を見つめて
「山田さんらしいね‥。」
と言った。
私らしいってどんなことがだろう。物欲が激しいとか思われてるのかな‥。
「じゃあ、また明日。」
「うん、気を付けてね。バイバイ。」
私は繋いでいた手に残る彼の温もりを握り締めて家に入った。
その手を開いた瞬間、忘れかけていた、あの‥胸を焦がすような想いが押し寄せてきたことに、私は気付かないふりをして瞼を閉じた。
―続―