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恋する日々
【学園物 恋愛小説】

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恋する日々〜消えぬライラックと生い茂るノコギリソウ〜前編-14

「あぁー…そりゃ夢だな。お前なんか疲れてたみたいでさ、いきなり倒れたんだよ」
「そ、そうそう!あ、ほら、競技中にいきなり倒れるから蹴られたりしてるからアタシが手当てしてあげるよ。こんなカワイイ子に手当てしてもらえるなんて工藤君、幸せだねぇ〜!」
「あ、あの飲み物どうぞ!」
信太が気がついたら冗談半分で罵声でも浴びせようと考えていた誠達は、信太が冗談ではすまされない体験をしていたとしり、一気に信太が哀れに見えそれをやめた。
「?なんだろうな、なんかとてつもなく申し訳ない気持ちになってきた」
「き、気のせいだよ気のせい。あは、ははは」
僅かに覚いだしそうになったが誠はそれを封印した。
「そういや礼、新崎早々に退場したんだって?」
信太に聞こえないようにこっそりと礼に耳打ちする。「ああ、近くに副会長がいたらしくてな。開始3分ともたずに気絶したらしい」
「そ、そうか…まぁ何はともあれ、壱組との点差が縮まったわけだな」
そう言いながらスッ…と立ち上がる。
「ん?誠、どっか行くの?もう少し横になってた方がいいよ?」
先程の怪我を心配している香織。いつもは少し素っ気ない態度だがやはり気になるようだ。
「気合い入れに顔洗いに行くだけだ、休憩終わるまでにはちゃんと戻るよ」


誠と同じ考えをしている者は多くトイレや水飲み場は長蛇の列ができていた。だが誠はそこには列ばずに校舎裏に行く。校舎裏には古いが水道があり、学園のほとんどの生徒が知られていない穴場となっていた。蛇口を捻りうがいをし5回ほど顔を洗う。
「あ………」
そこまできてようやくタオルを忘れた事に気づく誠。
「参ったな、どうすっか…」
「はいコレ、どうぞ」
タオルを諦め自然に乾燥するのを待とうと考えていたら後ろから声がかけられた。
「あ、サンキュー佐藤。よくここがわかったな」
受け取ったタオルで顔を拭きながら由佳里に聞く。おそらく由佳里のものであろうタオルからふわっと僅かに花の匂いがした。
「うん、すぐ追い掛けていったから」
「なんだ、呼んでくれりゃよかったのに」
「……話したい事があったの、誰もいない所で」
一瞬躊躇い目を伏せたが、由佳里ははっきりと言った。雰囲気を察した誠は真面目な、それでいて大切な話なのだと感じた。
「………誰もいない校舎裏で神那君と二人っきり。なんだか、あの時と同じだね」
少し周りを見渡し微笑む。あの時…それは5年前、誠が由佳里に告白をした時。その時の記憶が蘇り少し苦い顔をする誠。初めての告白、だがそれは相手の心を傷つけたものとなってしまったと思った為、誠にとってはあまりいい思い出ではなかった。
「…あの時は」
「あの時ね、すごっく嬉しかったんだ」
「………えっ?」
聞いた途端誠の頭の中が真っ白になった。
「嬉しくて、凄く嬉しくて涙が出ちゃう程ね。でも、私はあの時遠くに引っ越すのが決まってて簡単に会えないな、とか神那君も同じ気持ちだったんだなぁ、とか色々な事が頭の中に入ってきちゃって…逃げちゃったね」
……佐藤は今、同じ気持ちだったのだと、嬉しかったと言った。無神経な奴だとも、勝手な奴とも言わずに。ホッとした。心の中にずっとあったつっかえが無くなった感じがした。
「……あの時はごめんなさい。私が弱かったから神那君に辛い思いをさせた。今の神那君の気持ちがどうなのかはわからない。でも…よかったら、私と付き合ってください。私は、神那君が好きなんです」


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