シスコン『第六章』-5
『ジュー.....』
「ふわぁ………いいにほい………。」
千里は台所のテーブルのイスに座って、優魅の料理する姿をながめている。
「ただの野菜炒めだよ?」
「いーのいーの。ご飯によくあう。」
優魅は笑って、料理を続ける。
千里は自分の腹を触った。
「僕……少食なんだよねぇ。だからちっちゃいのかなぁ?」
優魅はクスクス笑う。
「そんな事ないんじゃない?ほら、せーちょーきの違いとか?」
「それを言われて早十五年。」
二人は顔を見合わせて、プッと笑った。
「やっぱ……千里君って可愛いねぇ!」
優魅は野菜炒めを大皿にうつしながら言った。
五人分という事もあり、結構な量だ。
「男に『可愛い』はタブーだよ?」
千里は微笑みながら言った。
「梓にも可愛いって言われてるもんね。」
千里はピクッと、少しだけ震えた。
「……そっちだって、秋冬君の事好きだってバレバレ。」
優魅は笑う。
「隠してるつもりないもん。」
優魅は千里に顔を近付ける。鼻と鼻がぶつかりそうなほどに。
「千里君は自分の気持ちに自信がないのかな…?」
千里は顔色を変えずに答える。
「フラれるのって、やっぱり怖いからね。」
千里は野菜炒めをつまみ食いした。
「せっかく少し仲良くなったのに、微妙な感じになるの、嫌だから。あ、これおいし。」
優魅は「もう〜〜。」と、頬を膨らませた。
「つまみ食いはだめっ!……それに、好きだって言われたら誰だってうれしいんだよ?」
優魅は並行して作っていた味噌汁をお椀にいれていく。
「さ、みんなを呼んできて?」
千里は「わかった。」と言って、台所の扉に手を掛けた。
「あ、そうだ。」
千里がつぶやいて、優魅を見る。優魅は不思議そうに首を傾げた。
「柚木さんって、どんな人がタイプ?」
優魅は指であごに触った。
「うーん……、頼りになる人だって言ってたような………。」
千里は、心の中で溜め息を吐いた。そして、台所を出た。
「みんな、ご飯できたってさ。」
千里が他のみんなを呼ぶ。
「OK。姉貴、行くぞ。」
「あと二十ページ………。」
「ほら、作山もだ。」
「あいよぉ。」
部屋を全員が出た。
晩ご飯も食べ終わり、それぞれがゆっくりしている時。
「じゃ、そろそろ帰るわ。」
澄が言った。
「そうか。」
秋冬も立ち上がる。二人は玄関まで行く。
「じゃ、また明日学校でな。」
秋冬が笑って言った。
「あ、くるんだ。」
「なにを。」
二人はクスクスと笑った。
「お前さぁ、やっぱ諦めねぇんだな。」
澄がそう言うと、秋冬は後ろを見て、春夏がいない事を確認する。
「まあな。正直無謀だよな。姉貴、すっげぇ鈍感だしよ。」
そう言って、秋冬は微笑む。と、言うよりは、自嘲気味に、自分を嘲笑うように。
「………気付かれても、困るっちゃあ困るから、なんか複雑……。」
「キスはバレてたんだろ?」
秋冬はうなずく。
「多分、お前とあん時した会話も、筒抜けだったろうな。」
澄は、自分の額を押さえて、下を向く。
「それでも気付かねぇって…、どんだけ鈍感なんだよ…。」
秋冬は笑う。澄はクツのつまさきをトントンとする。