『マニラバ!‐3.5』-2
「友達‥だからです。友達の困ってる顔は見たくないんで」
「へぇ〜、友達思いなんだね」
そんな見下した目で見られると、そんな気なんかなくても負けた気になるじゃねえかよ!
「舞ちゃんの友達だったら僕も仲良くなりたいな。近藤くん」
そう言って藤堂はいなくなった。
なんなんだよ‥
それからの舞は藤堂をうまくかわしてるように見えた。教室でもよく笑うようになった。いつもの舞に戻っていた。
そうだ。俺はあの笑顔が見たかっただけだったんだ。なのに、なんで、俺はあんな言い方しかできないだ‥
はやくあやまらなきゃ‥
はやく前みたいに‥
緊張してた。
決死の思いで俺は舞を呼んだ。
そんな驚くなよ‥
前はよく二人で放課後寄り道してた。だから今日も誘ったんだ。あやまろうと思って‥
だけどヨウスケが来た。
クラスの奴らはみんな、舞の持ち上げ方を知っている。ヨウスケは体育祭の委員会に舞がいないと始まらない、と連れていってしまった。
まぁ俺も食べ物で釣ったんだけど。
舞はいつものように話し掛けてくれる。でも、俺はもう前みたいにはできなくなってた。
体育祭の日もそうだった――。
遠くから舞と茜が頑張れ〜と手を振ってくれていた。舞はさっき障害物走で1位でゴールしてたな。俺は∨サインを出して二人に返事をした。
やっぱり今日の舞は一段と張り切ってるな。俺はその笑顔で頑張れるよ。
知らないだろ、舞。
「あれ。近藤くん?」
100メートル走の招集所に行くと嫌なヤツに声をかけられた。どうやら同じ組で、しかも隣のレーンで走るらしい。最悪だ‥
「今日の舞ちゃんは一段とかわいいよね!僕はあの笑顔だけで頑張れるよ」
俺は藤堂を睨んだ。
なんなんだよ。Jリーガーだかなんだか知らないけど、やってやろうじゃん!こうなったら勝負だ!
位置について、の声が聞こえる。その時だった‥
「俺、今日もう一度舞ちゃんに告白する」
えっ――‥?!
バンッ!!
ピストルが鳴った。
出遅れてしまった!
くそっ!結局最後まで藤堂の背中を追うはめになった。
ゴールした俺を見て藤堂は笑っていた。またあの見下した目で‥
舞と茜が話し掛けてきたけど、全然耳に入ってこなかった。
くやしかった。
俺はあいつに勝てないのか?――つーか、なんで俺、いつのまに‥こんなに‥