『マニラバ!‐3』-4
「‥ありがとうございます」
藤堂は包帯を巻きながら舞を見上げて微笑んだ。
舞の心臓はまだドキドキいってる――。
舞はその音がバレる気がして…
「あっ!そういえば、100、早かったですね。」
見ててくれたんだ――と藤堂は言う。
「同じ組でリョウ‥あっ、友達が走ってたから」
「あ〜、近藤くん?」
「あっ知ってるんですね」
藤堂は黙ってる。
沈黙が恐く、また舞は話始める。
「しっかし、先輩すごい人気ですね〜」
あの黄色い声援達を思い出した。
「あ〜、うれしいよね。でも…」
まっすぐに舞を見る。
「僕が好きなのは舞ちゃんだけだから‥。
舞ちゃんに一番に応援してもらいたい」
――トクン‥トクン‥
舞は藤堂から目が離せないでいた――。
「昨日言ったよね?合宿ほんとキツかったけど、これが終わったら舞ちゃんに会えるんだと思ったら頑張れた――。
‥久しぶりに会ってやっぱり好きだと思ったよ‥。
今日頑張る舞ちゃん見て好きだと思った――。
笑った顔見て‥好きだと思った――。」
舞は息ができなかった。
軽い捻挫だと思う、そう言って藤堂は立ち上がった。
「‥ケガが治ったら、僕とデートをしてもらえませんか――。」
舞は思い出していた。
初めはリョウを見ていた。でもあの時、1位で走ってくる藤堂から目が離せなかったのだ。
茜が言っていた言葉が頭をよぎる――。
――まずは知ることも大事なんじゃない?――
「‥はい。」
舞は返事をした。
そしてまた、トクン‥と心臓が鳴る――。