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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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赤萩真継の悩み 〜Adolescence Days〜-1

「まっつぐ〜!」
 高崎先輩いわく、元気が溢れて暴走しているような声。
 ほんとに全くごもっとも!
 っとに……この元気、いったいどこから湧き出て来るんだか?
「一緒に帰ろ〜!」
「うわっ」
 声と共に背中へ抱き着かれて、俺は思わず声を出してしまった。
「ま〜つ〜ぐ〜!」
 必死こいて抱き着いて来る愛しの彼女の頭を、俺はぐりぐり撫でてやる。
 ――あれから早くも一週間。
 谷町菜々子の『高崎先ぱ〜い!』が突如として『ま〜つ〜ぐ〜!』に変わった事で何だか妙にイタかった周囲の視線が、ようやく和らぎ始めた所だ。
「おっとま〜りおっとま〜りおっとまりぃ♪」
 わきわき抱き着いて来る菜々が、変な調子の歌を口ずさんでいる。
 ……んぁ?
「あっしたっはあったしぃのたっんじょっうびぃ〜♪おっとま〜りおっとま〜りおっとまりぃ♪」

 ぴぶゥ。

 俺は思わず吹いた。
「なんやてー!?」
 何でか知らんが、エセ関西弁が飛び出す。
「お、お、俺はっ……なんも言うとらんわ!いったいどこから、ンな話が出とんねん!?」
 生まれも育ちもこの近辺で関西圏には行った事もないこの俺のエセ関西弁に菜々は驚くでもなく、きゃらっと答えた。
「えー?あたしー」
 …………最悪。


 俺、赤萩真継(あかはぎ・まつぐ)。十五歳。
 愛しの彼女は谷町菜々子(たにまち・ななこ)。同じく十五歳(いや十六か?)。
 俺達は誕生日が二週間と離れていない上に産まれた産院も一緒、幼稚園〜高校までもが一緒という、幼馴染みというよりも腐れ縁の雰囲気の方が漂う関係だった。
 色々あってそれが幼馴染みから恋人に進展し、付き合いたてほやほやの初々しい時期に……なってないんだ、これがまた。
 恋愛関係に発展する前から体の付き合いがあったせいか、いまいち緊張感に欠けている。
 まあ……菜々が恋人に対してはここまでベタベタするタイプだというのは、知らなかったんだが。


「お〜と〜ま〜り〜いィ」
 ……………………………………はっ。
 ふと気が付くと俺は菜々の部屋に上がり込み、半分裸の体を擦り寄せられていた。
 い、イカンイカン。
 俺は正気を取り戻そうとして頭をぶんぶか振りかけ、即座に止める。
 菜々がこれ程傍にいるのにンな真似をしたら……甘い香水の薫りやらあったかくてやらかい体の感触やらで、理性がキレてしまう。
「お〜と〜ま〜り〜。えっち〜」
 …………望んでたのかオイ。
 ならやっぱりここで即座に押し倒……ぢゃねえええっっ!!
「だあああっ!」
 一声叫んだ俺は、息を荒げて立ち上がった。
「くっつくな触るななつくなっ!!俺は当分、体を使いたくないんだっ!!」
 叫んでから、しまったと思う。
 が、遅かった。
 菜々のくりくりした両目から、ぽろぽろと涙がこぼれ始める。
「ど……してっ……!」
 あぁ、女の涙にゃ勝てません。
 それが恋人なら、なおさらだ。
「この一週間、ま……つぐっ……真継、全然何にもしてくれないじゃない!」
 泣きながら、菜々が叫ぶ。
「何で付き合う前は色々ヤッたのに、付き合い始めてからは全然何にもしてくれないのよぉ!?」
 あのなぁ……。
「好き過ぎて、かえって手が出せないの」
 菜々の頭を撫でながら、俺は言った。
「だから泣くなよ」
 ところが菜々は、じたばた頭を振って喚く。
「やだやだや〜だ〜!」
 子供か。おまいは。
 まあ……俺も菜々も、自立できてない子供なんだが……。
「誕生日だもん記念日だもん真継とえっちしたいの〜!」
 ……なんつーか。
 ここまで必死になつかれると、かえって痛々しい。
「……菜々」
 俺は菜々の顎に手をかけ、顔を上げさせた。
 目を閉じて、ゆっくりと唇を重ねる。
 付き合い始めてから、初めてのキス。
 しばらくキスしてから唇を離すと、菜々は呆けたような顔をしていた。
「まつ……ぐ……」
 驚いている菜々を腕の中に収め、俺は確認する。
「……めちゃくちゃに、しちまうぞ。いいんだな?」
 菜々は……俺にぎゅっと、抱き着いた。
「……うん」


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