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夢の雫
【ファンタジー 恋愛小説】

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夢の雫2-8

一つ心当たりがあった。
この神前市以外にいる神懸り、警視庁他、中央に集められし神懸り。
「天つ神ですか。わたしも派手にやり過ぎたようですね」
「天つ神とは古い言い方ね。今じゃただの警察の犬よ」
今にも殴りかかりそうな重田を宥め、ほのかは努めて平静に言った。
とは言っても、目は神柳の動き、すべてを見逃すまいと見据えている。
「そうですか」
「あんまり興味ないみたいね」
「ええ。わたしの目的には何一つ関係ないことなので」
空気が刺すように痛む。
たたでさえ音の無い世界が、一切の音を遮断する。
三日前と同じ、いやそれ以上の殺気を重田は感じた。
「行くわよ!」
「おう!」
重田は真っ直ぐ神柳に向かって突進していく。
神柳はそれを片手を向け触れることなく受け止めると、吹き飛ばした。
「近寄ることもできないわけっ!」
「うっせーな」
重田は10mばかり離れた芝生の上に着地すると、再び突進する。
構えは下段、勢いはさっき以上だ。
しかし、それを神柳は同じように片手を向け、迎え撃とうとする。
だが重田も馬鹿ではなかった。

バアッ

相手を失った衝撃波は、空しく夜の闇へと消えていく。
重田が直前で衝撃波から身を交わしたのだ。
「頼むぜ!」
左脇腹へ向けての重田の一撃にほのかの炎が重なる。
「終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

コォン

鈍い金属音が辺りに響く。
結界に弾かれたのだ。
「惜しかったですね」
「…何でよ、何で利かないのよ」
信じられないというような顔で二人は神柳を見た。
相変わらず、表情一つ変えずに優男は立っていた。
「力が足りないからですよ」
「わかってるよ、んなこと…」
重田は吐き出すように言った。
二人して合わせた渾身の攻撃はこの男に傷一つ与えられなかったのだ。
力の差は圧倒的で、地球がひっくり返っても勝てる気がしない。
だが、今更自分の弱さを悔いたところで仕方が無い。
そうは言っても、それで割り切れるほど重田は馬鹿ではなかった。
しかも勝たなければいけないのだ、神山のため、そして自分のためにも。
「落ち込む必要はありません」
まるで見透かしたように神柳は言う。
「わたしの負けなのですから」
二人は顔を見合わせ、首を傾げる。
言っている意味がわからない。
どうして負けなのか、だから何がどうなるのか、まったくもってわからない。
顔を見合わせたままの二人が動かないでいると、周りの張り詰めた空気がスッと軽くなった。
神柳が戦闘状態を解除しのだ。
「まず何から聞けばいいんだ?どうして負けなのか、理由は何なのか」
殺気が無くなったことを察し、重田が口を開いた。
「ではなぜ負けか、ですか。あなた方がわたしの思っていた以上に強いからです。理由も同じようなものですね」
「思ってた以上?それは皮肉で言ってるのかしら?」
馬鹿馬鹿しいというように、ニヒルな笑みをほのかは浮かべる。


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